弁護士の転職活動の「進め方」とはじめるときに「準備すべきこと」

弁護士としてのキャリアアップのため、または現在の職場や業務内容への不満など、転職を考え始めたり決断するときには、人それぞれ様々な理由や思いがあるでしょう。その後、実際に転職活動をはじめる場合、どのように進めて、何を準備すればよいのか、また、転職までにどれくらいの期間がかかるのかなど、分からないことも多いのではないでしょうか。

そこで、このページでは、弁護士が転職をするときの流れに沿って、転職を成功させるために必要な準備やポイントなどをご説明いたします。

転職活動の流れ

はじめて転職される方は、どのように転職活動を進めて良いか、分からないことだらけでしょう。また、転職が2回目以降の方でも、改めて転職の流れや準備について調べる方も多いのではないでしょうか。まずは、転職活動の流れを把握しておきましょう。大まかには以下のような流れで進めていきます。

  1. 転職活動の目標期間を決める
  2. 転職する目的を考える
  3. 自分のスキル・経験の見直し
  4. 転職先を企業にするか法律事務所にするかを考える
  5. 情報収集をする
  6. 履歴書や職務経歴書を作成する
  7. 企業や法律事務所を選定して応募する
  8. 面接の準備・面接
  9. 内定をもらったら、退職手続き・入所準備を行う

転職活動の目標期間を決める

まずは、目安となる転職活動のスケジュールを立てましょう。いつから次の職場で働きたいのかを決め、そこから逆算し、以下にご紹介する準備や転職活動を大まかにスケジューリングしておきましょう。 一般的には3〜4ヶ月を目安とすると良いでしょう。

ただし、面接と退職日については、自分だけで決めることができません。面接は1箇所につき1回〜3回程度行われるため、余裕を持ったスケジュールにしておきましょう。

退職については、まずは雇用契約や業務委託契約等、契約上は何ヶ月前までに退職の申し出が必要とされているかを確認します。また、現在の勤め先や自身の担当している業務を踏まえ、引き継ぎ等に必要な期間を想定しておきます。事務所受任の共同案件や、個人受任案件などがある場合には、その対処について特に意識しておく必要があります。

転職する目的を考える

転職の目標期間やスケジュールを立てたら、転職の準備を始めましょう。転職を成功させる、スムーズに進めるためにはここからの準備はとても大切です。

まず最初に、転職する目的を明確にします。転職する理由は、人それぞれかと思います。しかし、何のために転職するのか、今後どうしたいかなどが漠然としていると、転職活動に様々な支障が出てきます。

例えば、応募先を選定するときに重視すべきポイントがないため決めにくく、情報収集にも時間がかかります。また、面接では転職理由や目的についての質問等はほぼ必ずありますが、そこで好印象を与えることも難しくなり、内定を得にくくなるでしょう。

このため、転職する目的を明確にしておくことは、とても大切です。

まずは、「年収を上げたい」「自宅から近い職場が良い」「ワークライフバランスが取れる職場」といった条件も含め転職によって実現したいことをリストアップしましょう。その際には、不満や条件の改善だけでなく、例えば、以下のような将来やりたい仕事や就きたいポジションなどの視点も必ず含めましょう。

  • 「スキルアップのため企業法務の分野を主に扱っている事務所が良い」
  • 「パートナー弁護士を目指したい」

リストアップが終わったら優先順位を付けましょう。それによって、応募先を選ぶときに重視するポイントや面接などで伝える転職理由も決まってくるでしょう。

自分のスキル・経験の見直し

転職の目的がまとまったら、自身のことを振り返ってみましょう。これまでどのような環境で、どのような経験を積み、どのようなスキルが身についたか、などをリストアップしてみます。以下の3つに分けて考えるとまとめやすいでしょう。

ヒューマンスキル 対人関係能力のことです。
リーダーシップ・接客・コミュニケーション能力などが含まれ、クライアントと接する法律事務所で重視されることが多いスキルです。
テクニカルスキル 業務を行う上で必要な知識や経験です。
30代以上の方は特に、即戦力としての採用となるため、このスキルも重視されます。
コンセプチュアルスキル 抽象的で複雑な物事を概念化し、本質をつかむ能力です。
特にインハウスのマネジメント職では高度なレベルが要求されます。

ここで挙げたものが、職務経歴書や面接で伝える内容となってきますので、じっくりと時間を掛けて、漏らさずリストアップして記録しておきましょう。

転職先を企業にするか法律事務所にするかを考える

目的やスキル・経験を踏まえて、企業内弁護士として企業へ転職するか、それとも法律事務所に転職するかを決めましょう。必ずしもどちらかに絞る必要はありませんし、転職活動中に変わることもあると思いますが、できることなら、どちらかに絞った方が良いでしょう。

法律事務所と企業では、得られる経験や環境は大きく異ります。また、法律事務所と企業では採用する人に求めるもの等が異なるケースが多く、応募書類の作成や面接でのアピールするポイントも異なってきます。

従来は、法律事務所で経験を積み、パートナー弁護士や独立を目指すのが一般的でした。しかし、近年では、組織内弁護士・企業内弁護士(インハウスロイヤー)や、法人化された法律事務所で勤務を続ける弁護士も増加しています。

5年後、10年後どうなっていたいか。キャリアプランやライフプランを具体的に想像して、企業と法律事務所のどちらに転職するか、決められない場合でもどちらを軸にするかを決めておくと良いでしょう。10年先ではイメージがつきにくいかもしれませんが、せめて2〜3年先までは具体性を持って検討しておく必要があります。

組織内弁護士・企業内弁護士(インハウスロイヤー)とは

組織内弁護士・企業内弁護士(インハウスロイヤー)とは、企業の従業員や役員として業務を行う弁護士のことです。企業内弁護士は、企業に雇用され、主に年俸制など固定給で勤務する、いわゆる会社員・サラリーマンなどと同様の勤務体系となります。

M&Aや契約法務、顧客への法対応、社内法務、知的財産、事業継承などその内容は多岐にわたります。企業内弁護士の採用では、実務経験が求められることが多いですが、ポテンシャルがある若手の弁護士が好まれる傾向もあり、実務経験のない弁護士や、司法修習生から採用する傾向も年々強くなっています。

企業内弁護士の推移

以下のグラフは、日本組織内弁護士協会による「企業内弁護士数を推移」を元に作成したものです。2016年6月時点での企業内弁護士は1707人で、全体の4.5%となっています。このように、企業内弁護士は、ここ数年増加傾向にあり、この傾向は今後もしばらく続くことが予想されます。

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パートナー弁護士とは

大事務所はアソシエイトと呼ばれる弁護士と、パートナーと呼ばれるマネジメント層の弁護士で構成されています。パートナー弁護士とは、主に、出資者としての地位を有する弁護士や、それと同格とされる地位にある雇用弁護士のことを指します。

アソシエイトは、パートナーの下で、まずジュニアアソシエイトからスタートし、数年でシニアアソシエイトとなります。その上のランクがパートナー弁護士です。

情報収集をする

これまでに考えた目的や転職先に沿って、実際に転職した人の経験談を聞いたり、求人媒体などを使って情報収集をしていきます。

求人情報には、企業のコーポレートサイトや転職・求人サイトに掲載されている「公開求人」と、人材紹介会社やヘッドハント会社、転職エージェントなどが持っている「非公開求人」があります。

公開求人

弁護士の公開求人として有名なのが、日本弁護士連合会の運営する「ひまわり求人求職ナビ」です。日本弁護士連合会が運営しているという安心感と、法律事務所や企業だけではなく、官公庁や自治体などの幅広い組織から募集がなされていることも特徴です。

非公開求人

非公開求人とは、その言葉通りの意味ですが、一般的には公開されていない求人のことを指します。非公開求人は、人材紹介会社などの転職エージェントのサービスを利用することで、転職エージェントから紹介されます。

転職エージェントは、一人一人の求める条件などから、最適な求人情報を紹介し、転職希望者と採用したい企業や法律事務所をマッチングするサービスです。転職エージェントは転職のパートナーとなって、書類の添削や面接のスケジュール管理、内定までをサポートします。

企業選定の手段

今、ご紹介したひまわり求人求職ナビや、転職エージェントなどを利用して、転職する企業を選定します。転職エージェントの仕組みや、それぞれを利用する際のメリット・デメリットなどについては、以下のページでご紹介しています。

弁護士が転職エージェントを利用すべき7つのメリットとは?転職サイトとの違いとは?

履歴書や職務経歴書を作成する

履歴書や職務経歴書は、読み手(採用担当者)の立場に立って、読みやすく作成し、自身の経験や自己PRを漏らさず記載しましょう。

手書きで書く場合は、黒色のペンで丁寧に記入し、パソコンで作成する場合は、WordやExcelを使用し、フォントは「MS明朝」や「MSゴシック」など一般的な字体で記入することがおすすめです。

また、事務所によってはロースクールの成績表や司法試験の結果表の提出などが求められますので、事前に準備をし、PDFなどのデータで準備をしておくと良いでしょう。

履歴書を作成するときのポイント

履歴書を作成する際に意識すべきポイントとして、以下の様なことが挙げられます。

  • 職務経歴書と矛盾がないこと
  • 空欄は避けて「特になし」と記入すること
  • 略字や組織内でしか通じない用語は避けること
  • 希望記入欄での給与や福利厚生などが、企業の求人情報とかけ離れていないこと
  • 志望動機は今までの経験を活かせること、意欲が感じられること、応募先の事務所や企業の求める人材に合わせた内容であること

職務経歴書を作成するときのポイント

職務経歴書にはフォーマットがないため、ビジネスパーソンとしての書類作成能力やプレゼンテーション能力も見られます。テンプレートや市販されている職務経歴書を上手く利用するのもひとつの手です。

職務経歴書を作成する際に意識すべきポイントとして、以下の様なことが挙げられます。

  • 転職の理由が妥当であること
  • 業務とかけ離れた経歴は削ること
  • 応募先の業務に関連した自分の強みを述べていること
  • 応募先の業務に関連した過去の案件・業務・取り組みを押さえること
  • 企業が求めている条件・業務内容が自分の経験やスキルでカバーできていること

企業や法律事務所を選定して応募する

情報収集をして、転職したいと思える企業や法律事務所が見つかれば、応募しましょう。応募した後は、応募した企業やサービスからの返答に沿って、履歴書等の応募書類を送ったり、面接の日程調整を行います。返答に対しては、できる限り速やかに対応しましょう。

面接の準備・面接

選考を受ける企業や法律事務所によって、予想される質問への返答のシミュレーションをできる限り行い、こちらからの質問事項を用意しておきましょう。

一般的に中途採用の面接では、求める人物像が具体的であることが多く、例えば、これまでの実績や経験、スキルや職務領域、職場風土との相性(コミュニケーション能力)等が確認されることが多いです。その企業にとってどのような人材が求められているかを想定しておくと良いでしょう。

また、前職の退職理由や転職活動をしている理由を尋ねられることがよくあります。採用側は採用した人がすぐに辞める可能性を除外したいと考えています。このような懸念を払拭できる返答を準備をしておきましょう。

基本的なことではありますが、面接において、第一印象が大事なのはご存知のとおりです。第一印象をよくするために「清潔感のある身だしなみ」を心がけましょう。

内定をもらったら、退職手続き・入所準備を行う

内定が決まったら、しっかりと労働条件の確認をしておきましょう。

労働条件が曖昧のまま入社してしまうと、勤務開始後に聞いてた話と違う、というトラブルが起きることもあるため、「労働条件、雇用契約書、就業規則」などはよく確認しておくことをおすすめします。

退職を伝えるタイミングについては、とても悩むところかと思います。ご存知のとおり、法律的には2週間前に表明すれば良いことになっていますが、業務の引き継ぎ等もあるため、雇用契約や就業規則などを事前に良く確認して置きましょう。無用なトラブルを避けるためにも、現在の就業先への配慮をしつつ、適切なタイミングで丁寧に伝えましょう。

おわりに

転職活動は、今後の人生をも左右するとても影響が大きいもので、一朝一夕でできるものではありません。しっかりと事前準備をし、情報収集をしておくことでその成功率は上がります。転職を考え始めた場合には、少しづつでも準備をしておくと良いでしょう。