IT弁護士の定義や取扱業務、IT弁護士への転身

IT弁護士とは?儲かるの?弁護士なら誰でもなれる?どんな知識が必要?

ウェブ等でIT弁護士を標榜している弁護士を目にすることがありますが、IT弁護士とは、どのような業務を取り扱う弁護士のことをいうのでしょうか。理系出身の理数系バリバリの弁護士でなければなれないのでしょうか。
今回はIT弁護士について説明します。若手弁護士のキャリアプランの参考になれば幸いです。

IT弁護士とは?IT弁護士の取り扱い業務は?

IT弁護士の定義があるわけではありませんが、通常、IT弁護士とは、IT(Information Technology。情報技術)に関する知見が豊富で、その知見を弁護士業務に活かしている弁護士のことをいうものと思われます。そういうと、何やら情報技術に関する知的財産権等を取り扱うイメージを抱くかもしれません。しかし、知的財産権を専門とする場合は、知財弁護士というような打ち出し方がなされる傾向にあります。確かに、その場合は知財弁護士と名乗ったほうが分かりやすいでしょう。そうすると、IT弁護士の取り扱い業務はどのようなものでしょうか。実際に、IT弁護士を標榜している弁護士や事務所の取り扱い業務を見ると、主に次のような業務を専門に取り扱うタイプに分けられるようです。

IT企業の企業法務

このタイプのIT弁護士は、IT企業全般の法務全般を取り扱うことが多いようです。IT企業のITが関係ない分野(例えば、労働関係)も取り扱っているようです。
IT企業法務では、例えば、契約書のチェックにしても、IT企業のビジネスモデルに関する知識がある程度なければ対応が難しいため、当然ながら、IT企業のビジネスに明るいことが求められます。ITそのものに対するリテラシーもあるに越したことがありませんが、むしろそれよりも、IT企業のビジネスに関する理解が重要でしょう。
また、IT企業法務に求められる特徴として、対応スピードがあります。ITは日進月歩の世界ですので、IT企業もスピードを重視した企業経営を行っています。IT企業法務では迅速な対応が求められることが多く、IT弁護士も、迅速な対応をウリのひとつとしているケースが多いようです。 IT企業でなくても、業務のIT化が急速に進む昨今、企業法務においてもITリテラシーが求められる局面があります。ITリテラシーに明るく、かつ、一般企業法務にも精通しているIT弁護士であれば、IT企業でなくても顧問のニーズはあるでしょう。

ウェブ上における、侮辱、名誉毀損、プライバシー侵害、営業秘密の漏洩に対する法的対応

ウェブ上における、侮辱、名誉毀損、プライバシー侵害、営業秘密の漏洩に対応を得意とする弁護士もIT弁護士を標榜することがあります。これらのケースに対する対応としては、次のようなものが挙げられます。

  • ウェブサイトの管理者に対する掲載削除請求
  • ウェブサイトの管理者に対する損害賠償請求(管理者が権利侵害を知っていたか、知り得た場合)
  • ウェブサイトの管理者に対する発信者情報開示請求(ウェブサイトの管理者が発信者の個人情報を保有している場合)
  • ウェブサイトの管理者に対するIPアドレス及びタイムスタンプの開示請求(ウェブサイトの管理者が発信者の個人情報を保有していない場合)
  • 前項のIPアドレスから割り出されたインターネットプロバイダに対する発信者情報開示請求
  • 発信者に対する損賠賠償請求

理系弁護士との違い

理系弁護士という言葉も耳にすることがあります。こちらは、理系出身の弁護士という意味で使われることが多いようです。そういう意味では、理系の知識を弁護士業務に生かしていようが生かしていまいが、理系出身の弁護士であれば理系弁護士といえるでしょう。もっとも、わざわざ理系弁護士と打ち出す以上は、理系であることを業務に生かしている弁護士が多いようです。IT弁護士を標榜する弁護士と、理系弁護士を標榜する弁護士のバックボーンを比べてみると、理系弁護士を標榜する弁護士の方が、エンジニア出身であったり、よりコテコテの理系で技術者寄りのバックボーンを持っている印象です(もっともIT弁護士を標榜する弁護士にも技術者寄りのバックボーンの方もいます)。

IT弁護士になるメリット

IT弁護士になるメリットとしては、IT企業の企業法務を獲得しやすいという点が挙げられます。企業はある程度の規模になると弁護士と顧問契約を結ぶようになりますので、成熟期の企業の多くは既に顧問弁護士をおいています。顧問契約を獲得するためには、業績が伸びていて、これから顧問が必要となるフェーズの企業が狙い目です。そのような成長フェーズの企業には、IT企業が多いため、そこを狙っていくというのは戦略としてよいでしょう。
また、ウェブ上の侮辱、名誉毀損、プライバシー侵害、営業秘密の漏洩についても、ソーシャルメディアとモバイルデバイスの普及を背景に、気軽にウェブ上に情報を投稿できる時代になり、今後益々、紛争が増えそうな分野です。にもかかわらず、この分野を専門とする弁護士は少なく、依頼を得やすい分野と思われます。

IT弁護士になるデメリット

IT企業になるデメリットは特にないのですが、弁護士人口の少ない地方の方や、将来的に地方にいきたいと思っている方は、一般民事全般をこなせる方が仕事が得やすいと思われますので、IT弁護士とやっていくことはマイナスといえるでしょう。

IT弁護士に向いている人

当然、ある程度ITに明るい必要があります。しかし、必ずしも理系である必要はありません。理数系の素養よりもむしろ、IT企業法務であれば、IT企業のビジネスモデルについての理解の方が求められます。また、前述の通り、IT企業は迅速な対応を求められることが多いので、迅速に対応できる方が向いているといえます。
そして、後者のウェブ上の名誉毀損の問題の対応については、「IPアドレス」等の用語にアレルギー反応があるような方でなければ、対応手順を覚えていけば務まるのでないかと思われます。ネット社会の負の部分であるウェブ上の名誉毀損の問題を解決したいという意欲のある方であれば、基礎的な素養はそれほど必要ないでしょう。

IT弁護士になるには

どちらのIT弁護士になりたいかによりますが、IT企業の企業法務のほうであれば、企業法務系の事務所に就職するのがよいでしょう。IT企業に特化した企業法務事務所に就職するのが最もよいと思いますが、企業法務系の事務所で一般企業法務の経験を広く積みながら、IT分野に関する知見は、勉強会等で身に付けていくことは可能でしょう。
また、ウェブ上の名誉毀損の方のIT弁護士であれば、専門の弁護士が書籍を出していたりするので、意欲があれば経験がなくても対応することは可能でしょう。仕事が来なければ経験を積むこともできないので、書籍や勉強会等で十分な知識を習得できたらば、自分のウェブサイトや弁護士ドットコム等のポータルサイト上で、この分野を取り扱っていることを打ち出し、仕事を取っていって経験を積むとよいでしょう。