弁護士の独立開業後の年収や独立開業の費用

独立開業する前に、独立開業後の収入の予測や、独立開業に必要な費用・資金、独立開業を成功されせるためのノウハウ等の情報を収集することが、独立開業を成功させるために極めて重要です。

そこで、以下では、これから独立開業を考えている弁護士の方に向けて、独立開業前に知っておくべきポイントを説明します。

独立開業後の年収

せっかく独立開業しても食べて行けず事務所をたたむことになってしまっては意味がありませんので、独立開業後の収入を予測して、やっていけるかどうか、また、独立開業以外の選択肢と比べて経済的な優位性はどうかという点において十分に検討すべきです。

費用の予測は比較的容易ですが、収入の予測は難しいので、独立開業した後に、思っていた収入にまったく届かないということも十分にあり得ます。地域性も大きく左右するので、開業を計画している地域の先輩弁護士に、独立開業後の収入の推移について、失礼にならないように気をつけつつ、相談してみるとよいでしょう。

なお、独立開業後の見込み年収を予測する上で有効な統計データはありませんが、アソシエイトも含めたデータでは、弁護士の年収の平均値は約2,500万円、中央値は1,500万円、所得の平均値は約1,000万円、中央値は約700万円となっています(無収入を母数から除いた値。出典「2014年弁護士実勢調査」)。このような平均の収入を独立してすぐに得ることは、それなりの経験と人脈がない限り難しいでしょう。

独立開業に必要な費用・資金

独立開業に必要な費用・資金は、自宅開業か事務所を開設するかによって異なり、自宅開業であれば、費用を格段に抑えられる反面、事務所もない弁護士で大丈夫かと思われて見込み客を逃す懸念や自宅が広く知られてしまうことによるプライバシーやセキュリティ上の懸念が生じます。

自宅開業の費用

自宅開業時に生じる主な費用には次のようなものが想定されます。

  • 事務機器(電話、FAX、コピー機、プリンター)、シュレッダー等の費用
  • 名刺、挨拶状、封筒、ゴム印、職印、事務用品等の費用
  • パソコン購入費
  • 判例検索サービス利用料
  • 書籍購入費
  • 執務用の机・椅子、面談用の机・椅子、書架、キャビネット等の購入費
  • 広告宣伝費
  • 弁護士賠償保険料

FAX、コピー機、プリンターについては、一体化された複合機が便利で、安いものでは数万円で購入できます。数十万円するような高性能なものでも、リースを利用すれば、初期費用なしで月額数千円から1万数千円程度で借りることが可能です。

広告宣伝費としては、事務所のウェブサイトの制作費や弁護士ドットコム等のポータルサイトへの掲載費があります。ウェブサイトはお金をかければ、それだけよいものができますが、あまり費用のかけられない自宅開業の段階では、サイト制作に過剰にお金をかけるよりも、ポータルサイトの掲載に回したほうが、費用対効果が高いでしょう。

面談用のスペースが確保できない場合は、弁護士会館等の打ち合わせ室を利用する方法も考えられます。

最低限の費用としては50万円ほどみておけば大丈夫でしょう。

事務所開設の費用

事務所の開設の費用としては、前述の自宅開業時に必要なものに加えて、次のようなものが想定されます。

  • 保証金
  • 内装費
  • 事務員の採用費、賃金、労働保険料、社会保険料

必要最小限度であれば100万円から300万円ぐらいあれば、大丈夫でしょう。

独立開業資金の借り入れ

資金が貯まるまでは独立開業を諦めなければならないわけではありません。弁護士に対して無保証で融資を行っている機関もあります。次の機関は金利も安いため、借り入れ先を検討する際の参考にしてください。

  • 日弁連の「弁護士偏在解消のための経済的支援」制度
  • 各弁護士協同組合の事業ローン
  • 日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)のローンや融資制度
  • 各自治体の事業ローン

独立開業マニュアル

日弁連と東京弁護士会が、独立開業に関するマニュアルをそれぞれ発行しています。東京弁護士会のものは、日弁連のものをベースに、東京における事情を意識して、編集されたものです。東京に限らず、大都市圏で開業する場合は共通部分も多いでしょうから、日弁連のものと併せて参考にするとよいでしょう。マニュアルは以下のリンクからダウンロードできます。

独立開業の悲惨な失敗例

独立開業の際によくある失敗例を紹介します。

費用のかけ過ぎ

当面必要性の乏しい過剰な設備投資を行って、自分の首を締めてしまうケースはよくあります。このパターンに陥る人のパターンとしては、次のようなものがあります。

  • 見栄っ張り
  • 弁護士として独立開業することに対する思い入れの強さが設備投資に現れる
  • 移転や買い替えコストを懸念しすぎる

後から不足が生じて、買い替える手間やコストを考えれば始めからそれなりのものを揃えた方がよいという考え方は、間違ってはいないのですが、そのコストが金額にしていくらなのかという適正な評価手順を踏まずに、何となく過剰投資をしてしまうケースがよくあります。

必要性の高いものを必要な範囲で用意し、徐々に設備を充実させていくようにしましょう。

依頼がない

弁護士会によっては、キャリアの浅い弁護士には、国選や当番を回さないところもありますし、そもそも国選や当番だけで食べていくことは難しいでしょう。どうやって仕事を取ってくるのか、どのくらいの収入が見込めるのかという点をしっかりと見積もってから独立開業すべきです。

問題の料金設定、取りっぱぐれ

事件が解決までに長引いたときに、報酬設定によっては、報酬が得られず、経済的に苦しくなることがあります。事件の途中でもポイントポイントで報酬を得られるような料金設定をしておくとよいでしょう。

また、依頼がない日が続くと、依頼を取るために、破格に低廉な報酬で仕事を取ってきてしまうケースもよくあります。若いうちは経験だと割り切ってあまり利益にならない事件でも受けることも重要ですが、そのために事務所の経営を破綻させてしまっては元も子もありません。

そして、すべての報酬を満額回収できるとは限りません。理由をつけて報酬を支払わなかったり、報酬の減額を求められたりすることも珍しいことではありません。与信に関する感覚を持つことや、前述の通りリスクの小さい料金体系にしておくことも重要でしょう。

独立開業時の年齢

何歳で独立することが最善かという趣旨の質問が弁護士ドットコムキャリアに寄せられることがあります。この点でいうと、年齢よりもアソシエイトとしての期間の方が基準になるでしょう。

独立開業すると、これまでボス弁護士や事務所の先輩弁護士に相談できていたようなことを相談する相手に困ったり、パラリーガルに依頼していたようなことを自分で行わなければならなかったりする等、業務面における負担が増すことが想定されます。これに加えて、当然、経営面も気にしなくてはなりませんから、負担が業務面、経営面の両面で一挙に増えることになります。ですので、業務面の負担増が小さくて済む段階、すなわち、ボス弁護士や事務所の先輩弁護士に頼らなくてもある程度問題がないくらいの経験を積んだ後に独立するとよいでしょう。しかしながら、経験はいくら積んでも十分ということはありませんので、もう少し経験を積んでからと考えているうちに独立の時期が遅くなってしまいます。一定の経験を積んだ後は、弁護士同士のつながりや日弁連や弁護士会の独立支援制度を活用する等して相談できる相手を確保しつつ独立してもよいでしょう。どのくらいの期間、経験を積んでから独立するこが適当化という点については、外部リソースを活用するうまさや、経営者としての適性等の要因にも左右されますので、早い人で1、2年、長くて5年というところではないでしょうか。