弁護士の仕事と弁護士が就職時に自分に合った事務所を探す方法

弁護士が法律や裁判の専門家だということは誰でも知っていますが、弁護士が日々どのような仕事をしているのかは意外に知られていません。弁護士は、法律や交渉ごとに関しては何でも扱うことのできるオールマイティーな資格ですから、その仕事の内容は大変バラエティに富んでいますし、人によって扱う仕事も大きく違います。

そこで、ここでは弁護士の仕事の種類、内容についてまとめてみましょう。一般の方にもわかるように説明しますが、キャリアチェンジを考えている若手弁護士や司法修習生に是非読んでもらいたい内容です。

弁護士になるには

まず、弁護士になるにはどうしたらよいのかを簡単にまとめてみます。弁護士、司法修習生、法科大学院生の方は、読み飛ばしてください。 弁護士の資格を得るためには司法試験に合格する必要があります。ただ、司法試験を受験するためには、2つの道のいずれかを通らなければなりません。

一つは、大学を卒業した後に法科大学院(ロースクール)に入学し、卒業後に司法試験を受験する方法です。

もう一つのルートは、法科大学院を経由せず、予備試験という試験を受験するルートです。この予備試験に合格すると法科大学院を修了したのと同程度の能力があると認められ、司法試験を受験することができます。

司法試験の受験には回数制限があります。具体的には、法科大学院修了もしくは予備試験合格から5年以内に5回受験することができ、それ以上の回数を受験するには再度法科大学院を修了するか予備試験に合格する必要があります。

この司法試験に合格すると、司法研修所及び実務の現場(裁判所、検察庁、法律事務所)での1年間の司法修習を経験し、その後の修了試験(「二回試験」と呼ばれています。)に合格して司法修習を修了した人が晴れて弁護士の資格を得ることになります。

なお、日本の法曹資格は入口では弁護士、裁判官、検察官を区別していませんので、裁判官や検察官になる人も、これと同じ道をたどってそれぞれの職に就くことになっています。

弁護士の仕事

弁護士には、法律事務所に勤務して仕事をする弁護士、企業に勤務して仕事をする弁護士、国や地方自治体に勤務して仕事をする弁護士がいます。

順番にそれぞれの仕事の概要を説明していきましょう。

法律事務所の弁護士の仕事

一般民事事件

一般民事事件という用語には明確な定義があるわけではありませんが、家事事件・企業法務・倒産(債務整理・破産など)などの特別な分野以外の民事事件を総称するものとして使われるのが普通で、家事事件や債務整理事件を含むものとして使われる場合もあります。

借地借家、損害賠償、貸金など大変広い分野にわたりますが、専門性は必ずしも高くなく、弁護士なら誰でも扱うといってもよいタイプの事件です。弁護士の仕事の基本となるものといえるでしょう。

相手方との交渉から始まり、調停・訴訟などの裁判所の手続まで段階を踏んで解決を目指します。

家事事件

家庭裁判所が扱う事件、つまり民法の親族・相続分野に関する事件です。
特に、離婚、遺産分割は相談・受任件数が多く、弁護士の仕事の柱の一つといってもよいでしょう。

労働事件

労働者と企業との雇用関係に関する事件が労働事件です。
解雇、未払賃金請求、残業代請求などが代表的な事件といえます。また、勤務先でのセクハラ、パワハラ案件も労働事件に含まれます。

消費者事件

普通の人がした取引に関する争いごとが消費者事件と呼ばれるものです。

訪問販売やキャッチセールスなどでセールストークに負けて高額な商品を買ってしまった場合や、先物取引・FXなどの投資で業者の虚偽や不十分な説明によって思わぬ損失を出した場合、クレジットカードを利用して購入した商品やサービスの欠陥があった場合など、消費者としてした取引に法的な問題がある場合すべてを含みます。

消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法などの特別法を駆使して、交渉、訴訟により解決を目指します。

医療過誤事件

医療機関の医療行為のミスによる損害の賠償を求める事件が医療過誤事件です。

医療過誤事件は、ある程度の医療に関する知識が必要であり、協力医師とともに事件を遂行したり、カルテの証拠保全など特有の手続を取るべき場合もありますので、専門性を求められるタイプの事件です。

実際にも、医療過誤事件を専門にしている弁護士も存在します。

行政事件

行政事件とは、国や自治体などの行政機関が国民の権利利益を侵害した場合に行政を相手に行うものですが、国家賠償訴訟を筆頭に、公立高校で生徒が退学処分になった場合にその取消しを求めるもの、公務員の懲戒処分の取り消しを求めるもの、所得税の課税処分の効力を争うものなどさまざまな内容のものが含まれます。

行政事件は、行政事件訴訟法、国家賠償法や各行政機関の設置法など普段使わない幅広い法律を使うものですので、やはり専門性が求められる事件というべきでしょう。

債務整理・破産

債務整理事件は、大きく分けて個人の債務整理と法人の債務整理とに分けられます。法人の債務整理は場合によっては大量の事務処理が求められるため、ある程度のマンパワーのある事務所でないと処理できないこともありますが、個人の債務整理はそのようなことはなく大抵の弁護士が扱っている分野です。

債務整理事件を受任した場合には、破産、再生、任意整理のいずれの手続が適しているかを判断し、早急に受任通知を債権者に発送してそれぞれの手続に応じた処理をしていくことになります。

数年前までは大勢の弁護士と事務員を雇って大量処理を行う債務整理専門の大規模な法律事務所も目立ちましたが、貸金業法の改正や景気の改善などによりいわゆる「過払いバブル」が終了したため、一時期ほどには専門の事務所は目立たないようです。

なお、破産や民事再生(個人再生を含む)などの裁判所での債務整理手続では、債務者側の代理人の仕事のほかに、破産管財人や監督委員などの裁判所からの依頼で行う仕事もあります。破産管財人などに選任してもらうには、破産管財事件を多数扱っている事務所で経験を積むほか、地道に申立代理人の仕事をこなして裁判所の信頼を得ることでも選任してもらうことができます。この場合も、大規模な管財事件の破産管財人になるには、複数の弁護士や事務員を利用できる環境にあることが必要でしょう。

企業法務

企業法務は、ある程度の規模の企業の内部で生ずる法律的な問題を担当するもので、契約書の審査を始めとして、M&A業務、金融法務、訴訟業務など多様な内容が含まれます。 企業法務を専門とする事務所は大都市には多数存在しており、有名法律事務所の中には数百名の弁護士を擁するものもあります。

特にM&A、事業再生、金融法務、知的財産などの分野は高度な専門性が求められ、東京・大阪などに所在する有名法律事務所を中心に取り扱われています。

渉外

渉外事件は国際性のあるビジネス案件をいい、外国企業との折衝が不可欠であるため、高度の専門性を有する業務です。企業法務を扱う大規模事務所が扱うことが多く、専門分野に高度に特化したいわゆるブティック事務所を除いては通常の弁護士が扱うことは稀であると言えます。

刑事事件・少年事件

刑事事件はほとんどの弁護士が扱う分野ですが、国選弁護や当番弁護などの弁護士会の名簿への登録を通じて定期的に少数の刑事事件を扱っている弁護士が多く、これを専門に扱う弁護士は限られています。

ただ、名簿に登録すると弁護士会から月に1回程度から年に数回程度担当が割り振られるため(頻度は弁護士会によります。)、刑事事件を全く扱わない弁護士はあまり多くはないでしょう。

少年事件も刑事事件と同様に国選や当番を契機に受任されることが多い事件ですが、少年審判には成人の刑事事件とは異なる特徴があるため、家庭裁判所調査官、学校関係者、少年の両親などと接触する機会が多く、また少年との信頼関係を築く必要もあるため、刑事事件よりも手間暇を掛けた丁寧な処理が求められる事件です。

企業内弁護士の仕事

かつては企業が法律問題を扱う場合には、社員である法務部門担当者が会社の顧問弁護士を相談・打合せをして行うことがほとんどでしたが、最近は弁護士資格を有する人を社員として雇用し、法務部門に配属して業務を担当させることが増加しており、企業内弁護士の数はこの10年ほどで約10倍に増加しています。

企業内弁護士は、法務部門に所属して、会社の各部署が取り交わす契約書の審査、訴訟案件の管理、ガバナンスやコンプライアンス政策の策定・実施などを担当します。

立場的には、一般の弁護士と異なりサラリーマンということにはなりますが、専門に特化した職種であり、社内で特有の地位を占めることができるでしょう。

国や地方自治体での弁護士の仕事

任期付公務員として国や地方自治体に勤務する弁護士も最近は増えています。特に、自治体は弁護士を採用するのに積極的で、弁護士資格者を職員として配置している自治体は増え続けています。

行政機関での弁護士の仕事は、各部署の職員への法律的なアドバイス、条例制定など政策に関する法的側面からの支援、訴訟対応、行政に関する紛争の処理など多岐にわたります。

自分に合った事務所の探し方・選び方

二回試験に合格して弁護士資格を得ても、いきなり一人で独立して事務所を構えるのはかなり勇気のいることです。固定した顧客もおらず、安定した収入源もない状態では、事務所の家賃を捻出することにも苦労することになってしましまいます。もちろん、それで成功した弁護士も多数いるわけですが、やはりできれば法律事務所に就職して仕事のノウハウを得てから独立を考えるのが無難ですし安心です。裁判所に申立てをするときにどのような書類を準備してどこに出せばいいかなどの細かいことについて教えてくれる人がいるだけでも、始めのうちはとても精神的に助かるものです。

ただ、法律事務所を探すといっても、企業への就職とはだいぶ状況は異なります。一般の求人誌に弁護士の求人を出している法律事務所はありませんし、新卒学生のように就職情報が同学年の学生間に行きわたっているということもありません。弁護士の就職に関しては、自分で募集している法律事務所を探してアプローチするしかないのです。

新たに弁護士を募集している法律事務所を探す方法としては幾つかのものが考えられます。

まず、最も手軽で安心なのが、各弁護士会が開催している合同説明会に出席することです。開催方法は弁護士会によって異なりますが、求人を出している法律事務所から採用担当者が出席して事務所の概要を説明してくれるもので、企業の合同会社説明会と同様のものです。そこで具体的な話を聞いた事務所の中から自分に合っていそうな事務所を複数ピックアップして連絡を取り、訪問してさらに詳しい話を聞いたり事務所の雰囲気を見るなどして正式に応募するかを決めればよいでしょう。

また、求人企業による合同説明会も行われていますので、これに出席することも同様に役立ちます。

次に、最近では弁護士用の求人サイトも複数存在していますし、日弁連も「ひまわり求人求職ナビ」の名で求人情報を公開しています。これらのインターネット上の情報を通じて気になる事務所を調べ、連絡を取って訪問をする方法もあります。

なお、弁護士からの口コミも大きな情報源です。説明会や求人サイトなどでは得られない生の情報を得ることができますし、プロによる各事務所の評判も知ることができるからです。実務修習地での就職を考えている場合には、現地の弁護士から情報を得ておくことが有益です。

就職活動を成功させるためのポイント

法律事務所への就職活動を成功させるには、いくつかの注意すべきポイントがありますので、以下に挙げてみましょう。

複数の事務所を検討する

始めから一つの事務所に絞って就職活動を行うことはやめましょう。第一希望の就職希望先があるとしても、必ず複数の事務所を訪問してそれぞれの事務所をさまざまな点から比較してみることが重要です。

弁護士経験がある人が転職をする場合ならともかく、初めて弁護士になる人にとっては、実務修習先の事務所くらいしか実際の法律事務所をじっくり見る機会はないでしょう。さまざまな事務所の様子を見ることで一般的な法律事務所はどのような雰囲気なのかを生で感じることができますから、それとかけ離れた雰囲気を感じる事務所には注意することができます。

また、法律事務所は仕事の進め方や運営の方法にボスやパートナー弁護士の個性が強く出ます。複数の事務所を比較することによって、各事務所の個性を比較することができ、それが自分との相性を判断する材料にもなります。

給与などの勤務条件の確認

ベテラン弁護士の中には、自分が弁護士として労働者からの相談を受ける立場でありながら、勤務弁護士の勤務条件については大変アバウトな感覚の持ち主がまだ多数存在します。

単純な給与支給額だけでなく、パソコンなどの設備の用意があるか、個人事件の受任が許されるのか、許されるとすればその分の経費を事務所にどの程度入れるのか、個人事件での事務員や事務所設備の使用が許されるのか、弁護士会費を負担する必要があるか、将来的に共同経営者(パートナー)となることが予定されているか、予定されているのであれば経費分担はどのように予定しているかなど、考えられる細かい条件をリストアップして確認しておくべきです。

仕事が軌道に乗って自分で事件が取れるようになると、事務所との間で、個人と事務所の仕事の割合や経費額などでゴタゴタするケースもありますので、先のことまで考えて事務所としての考え方を確認しておきましょう。

他の弁護士との相性

大規模事務所の場合は別として、日本の法律事務所の大部分を占める小規模の事務所では、ボスを含む他の弁護士との相性が勤務環境を大きく左右します。また、弁護士に成りたてのうちは、先輩やボスからの指導を受けられないと大変苦労することになります。

訪問や面接の機会だけで人柄を判断することは簡単ではありませんが、相性の悪い人とは初めて会った時から相性は悪いものですから、目先の就職先の確保だけにとらわれずに先のことまで考えて判断するようにしましょう。

この点では、法律事務所への就職も一般の就職と変わるところはありません。

情報の収集

法律事務所の求人情報はさまざまなルートから収集しましょう。一般の企業と異なり、法律事務所に関する情報はインターネット上での検索などで広く得られるものではありません。情報は多いに越したことはありませんから、口コミも含めてアンテナを広く張って情報を収集しましょう。

まとめ

以上、弁護士の仕事について説明してきましたが、弁護士の仕事は苦労も多く、楽な仕事ではありません。しかし、基本的には困っている人のためにその力になる仕事ですので、大変やりがいのある仕事ですし、人から感謝されることの多い仕事でもあります。

また、自分の得意分野を見つけることができれば、営業的にも十分成り立ちますし、やりがいも増えることになります。

自分なりの弁護士としてのやりがいを見つけて、充実した生活を送りましょう。