企業法務が強い事務所に転職したい弁護士が知っておくべき3つのこと

日本の法律事務所の多くは、一般民事と呼ばれる個人を依頼者とする民事事件を業務の中心にしている法律事務所です。法律に関する案件の件数からすれば、このような個人の法的問題(離婚、相続、借金、交通事故など)が最も多いと思われますから、それを業務とする弁護士(法律事務所)が多いのは当然のことといえます。

いったんこのような一般民事を扱う法律事務所に就職したものの、企業法務を扱ってみたいと考えが変わった場合、一般民事の事務所に籍を置きながら本格的な企業法務を扱う機会はなかなかありません。中小企業からの依頼で企業法務に属する案件を扱う機会はあるかもしれませんが、大規模・高額な本格的な案件や、海外を相手にする国際的な案件などは、企業法務系の法律事務所に在籍していないとほとんど扱う機会はないでしょう。

本格的な企業法務を扱ってみたいと思った場合には、やはりそのような案件を扱っている法律事務所に移籍(転職)するのが一番の早道です。

ここでは、企業法務系の法律事務所への転職についてまとめてみます。

企業法務弁護士の仕事内容、魅力・やりがい

企業法務系の法律事務所の弁護士はどのような業務を行っているのでしょうか? いわゆる企業法務とは、企業の活動に伴って生ずる法的問題を処理する業務といえますが、その内容は大変多岐にわたるものです。 典型的な企業法務としては、M&A、ファイナンス(金融法務)、倒産、事業再生、知的財産、契約書審査、企業不祥事対応などが多くの人が想像するものですが、その他にも、労働案件、独占禁止法案件、あるいは企業の日常業務で生じた法的問題に対する相談など、企業法務といえるものの範囲は大変広いものとなっています。

このような企業法務のうちでも、新聞紙上をにぎわすような大規模な経済案件を扱う法律事務所は限られています。いわゆる5大事務所といわれる、西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、TMI総合法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所のような300名を超える弁護士を擁する法律事務所に代表される東京の大規模法律事務所がそれですが、中には所属弁護士数は多くないものの、極度に専門化した結果、小規模であっても企業法務案件を多く扱っている法律事務所(いわゆるブティック型法律事務所)も存在しています。

こうした企業法務を扱う弁護士の業務の魅力はさまざまですが、何といっても、日本の経済に影響を与えるような重要かつ大規模な案件を扱うことができる点に大きな魅力があるのではないでしょうか。自分の仕事の結果如何によっては、日本の社会に何某かの影響を与えるかもしれないということになれば、自然と仕事に対するモチベーションも高くなるでしょう。

また、企業法務案件には、国内の案件だけでなく、海外の企業を顧客若しくは相手方とする案件(渉外案件)もありますので、企業法務を扱うことによって世界を股にかけた活躍ができる可能性もあります。企業法務系の法律事務所に所属する弁護士の多くは、海外に留学してその国の弁護士資格を得ており、そういった幅広い活躍をするための下地を持っています。この国際性も大きな魅力でしょう。 さらに、扱う案件の専門性を高めていくことによって、この分野の案件ならこの弁護士というような高い地位を築くことも可能です。企業法務の分野は日進月歩ですので、まだあまり他の弁護士が扱っていない分野が常に残されています。うまく専門性を獲得すれば、弁護士として大変大きな武器になるでしょう。

企業法務弁護士の年収

こうした企業法務系の弁護士は、一般民事を扱う弁護士に比較してその収入も大変多いようです。 5大事務所などでは初任給でも1,000万円を超えるなど大変高い給与水準にあり、その他の企業法務系の法律事務所も高い水準にあります。おそらく企業法務系のトップクラスの弁護士は、億を超える年収を得ているものと思われます。

企業法務系の弁護士に限定した収入に関する統計資料がないのが残念ですが、企業法務案件では1つの案件から生ずる弁護士報酬の単価が一般民事事件よりも大きいことは間違いありませんので、弁護士の収入も多くなるのは当然でしょう。また、評判が高まるほどタイムチャージの単価も高くできますから、仕事に力を入れれば入れるほど、経験を積めば積むほど収入も上がっていくことになります。

ただ、収入が高い分、仕事はハードです。企業法務系弁護士の世界では、よく勤務時間は「9時から5時」といわれますが、これは午前9時から午前5時という意味で、大変長い労働時間を強いられることが多いようです。結局企業法務系の弁護士は、単に収入が高いというわけではなく、厳しい労働と引き換えに高収入を得ているということになります。

また、将来事務所のパートナーになるにはかなり高い売り上げを確保する必要があります。そのために所属弁護士は年を追って淘汰されていくことになります。つまり、稼げない弁護士は事務所にいられなくなるということです。同じ事務所内で売り上げをめぐっていわば弁護士間の競争が生ずることになりますので、企業法務弁護士には法的知識だけでなく、顧客を得るための地道な営業努力も要求されることになります。優秀な弁護士がたくさんいる世界ですので、待っているだけでは他の弁護士に顧客を取られてしまうというわけです。 そういった点では、企業法務系の弁護士になるには、自分の業務の拡大について相当の努力をする覚悟が必要といえるでしょう。

なお、企業法務といっても、もちろん大企業を依頼者とする大規模な案件ばかりというわけではありません。中程度の企業を依頼者とする企業法務弁護士は、5大事務所などの大規模事務所と比べれば収入は高くないかもしれませんが、一般民事の弁護士と比べれば高い収入を得ることができ、過度な労働時間を強いられることもありません。扱う事件の規模は小さくなるかもしれませんが、このような中規模の企業法務系法律事務所に勤務するのも一つの賢い選択といえそうです。

さらに、最近はインハウスローヤー(社内弁護士)、すなわち弁護士を社員として雇用する企業も増えています。会社法施行後、コーポレート・ガバナンスや企業のコンプライアンスなどが重視されていますので、専門家である弁護士を企業内に置くことによってこれらを十分に確保しようという企業が増えているためです。やはり、社外の顧問弁護士に問題が生ずるたびにいちいち相談をするよりは、社内に弁護士を配置しておいていつでもすぐに法律問題への対応ができるようにしておいた方がよいということでしょう。

これらのインハウスローヤーは、多くの場合ある程度実務経験のある弁護士が中途で採用されていますので、企業法務を扱いたい弁護士にとっては転職先として考慮の対象としておくべきでしょう。特に、インハウスローヤーはその会社の社員になるわけですから収入的には非常に安定していますし、給与も他の社員と比較して多めにされていることが多いようですので、その点も魅力の一つです。

企業法務事務所の探し方

こうした企業法務を扱う法律事務所に転職したいと考えたとき、どのようにして転職先を探せばよいのでしょうか?

法律雑誌などに求人情報が出ていることもありますが、件数や頻度は多くありません。かといって、弁護士専門の求人誌などが発行されているわけでもありません。

そこで、転職の参考のために次のような方法を紹介しておきます。

エージェントに登録する

第一に、いわゆる転職エージェントに登録する方法があります。
転職エージェントは、職を求めている側と、人を求めている側とを結びつけることを業務としていますが、弁護士を対象とした転職エージェントもいくつか存在しています。
求人を公表していない法律事務所もありますので、自分で転職に関する情報を集めて転職を実現するのは簡単ではありませんが、法律事務所の中には、求人情報を公表せずに転職エージェントに求人情報を登録しているところもあります。

この転職エージェントを利用すれば、その業者が持っている弁護士の求人情報の中から自分の希望する条件に合った転職先候補をリストアップしてもらうことができます。もちろん、現在勤務している法律事務所には秘密で依頼することができますので、転職がうまく行かなかった場合でも心配はありません。

弁護士ドットコムキャリアでは、無料で転職に関するサポートを受けることが可能です。

企業が弁護士を探すためのポータルサイトを利用する

転職エージェントと同様に、最近はインターネット上に弁護士に関する情報を掲載しているポータルサイトがあります。
代表的なものは弁護士ドットコムで、弁護士を求めている依頼者と顧客を求めている弁護士を結びつける役割を果たしています。

中小企業が弁護士を探す際にも、こういったポータルサイトはよく利用されていますので、これらのポータルサイトに自分の情報を登録することによって中小企業の顧客を増やし、自分の業務を中小企業を対象とする企業法務に転換していくことも可能です。弁護士ドットコムなどでは、登録した弁護士が力を入れている分野を指定することができ、その分野の中には企業法務もありますので、これを上手く利用して企業の顧客を集めることもできます。
この場合には、転職ではなく、自分の取扱業務の転向ということになりますが、自分の業務は自分でコントロールしたい人には、他の法律事務所の勤務弁護士となるよりは向いている方法かもしれません。

まとめ

企業法務を業務の中心として扱っていくには、漫然と弁護士業務をこなしていくだけでは足りません。自ら積極的に動かなければ、企業の顧客は足を運んではくれません。もともと企業法務を扱っている法律事務所に転職するか、自分の業務を企業法務に変えていくか、いずれの方法を取るにせよ、情報を集めて自ら動かなければ業務が変わることはないでしょう。

本文に紹介したような専門の業者にアプローチした上で良い情報を取捨選択して、良い転職や業務内容の転換を実現しましょう。