弁護士の転職先の選び方とは?各転職先の特徴とキャリアパス

「転職したいけど転職先をどうやって決めたらいいか分からない」と、お考えではないですか?
転職には様々な不安がつきまといます。転職先の選び方もまたその1つです。
後悔しない転職をするためには転職先の選び方について理解しておくことが重要です。

この記事では、弁護士ドットコムキャリアのキャリアコンサルタントが「失敗しない転職先の選び方」を紹介していきます。
この記事があなたの転職のご参考になれば幸いです。

転職先の選び方

(1)転職目的を明確に

転職先の選択は、どのように考えるべきでしょう。大切なことは、転職の目的です。

①転職の目的は、理想と現状のギャップから考える

転職の目的は、理想とする姿と、現状の不満とのギャップが関連しています。

希望する仕事や、年収、勤務時間などが、実態と大きいほど、不満は大きくなります。 不満の原因は主に以下のようなものが考えられます。

  • ボスの仕事のやり方・態度等に不満がある
  • 給料が少ない
  • いま主に担当している分野と自分がやりたい分野にズレがある
  • 今の事務所は個人案件を禁止されている

②転職目的を明確にする

現状の不満を明確にしたら転職目的が明確になるのではないでしょうか。

基本的には現状の不満を解消することが転職の目的となります。先ほどの不満を踏まえて、例えば以下のように転職の目的を明確にしておきましょう。

  • ボスと性格的に合わない。今のように怒りっぽいボスじゃなくて温厚なボス弁の事務所に転職したい
  • 今より月間5万円以上の給料をもらえるよう転職したい
  • キャリアパスとして離婚に強い弁護士になりたいが、現状の仕事は交通事故が多いので離婚事件を多く扱っている事務所に転職したい
  • 個人案件の受任がOKな事務所に転職したい

(2)強みを踏まえて検討する

転職目的を明確にできたなら、その目的を満たす転職先を探します。選別の第一基準は、あなたの目的を満たす、理念のある転職先かどうかです。

そして、転職先で貴重な戦力と評価してもらえる得意分野があるかどうかが肝です。他にない強みを持たない限りは、転職自体が非常に難しいことを自覚すべきです。

また、得意分野があったとしても、転職先が必要とするスキルでなければ無意味です。

次に、各事務所の特徴や業務内容、年収、転職のメリット・デメリットなど紹介させていただきます。

一般民事系法律事務所の特徴

(1)特徴

オーソドックスな形態は、ボス弁1人、イソ弁2~3人、事務員2~3人ですが、今では、弁護士10~20人規模の個人事務所は珍しくなくなっています。

個人と中小企業を主たる顧客とし、一般民事事件と顧問料が主な収入源です。

事件内容を選ばず、広くあらゆる分野を手がけますが、近年では、交通事故事件、刑事事件、離婚事件、債務整理事件など、事件内容を特化している事務所も現れました。

また、弁護士100名規模で地方にも展開する大規模事務所では、事件内容毎に専門チーム体制をとるところもあります。

(2)業務内容

取り扱う事件の大部分は、民事事件です。債権回収、交通事故、離婚、債務整理、過払金請求、労働事件、相続、不動産、知財、特に限定はありません。

多くの事務所では、私選、国選を問わず、刑事事件も守備範囲です。

各事務所の理念、ボス弁の方針次第ですが、多くの事務所では、以下の活動は各弁護士の自由とされます。

医療弁護団、労働弁護団など特化した専門弁護団に参加すること、弁護士会の会派活動、委員会活動、人権活動、プロボノ活動などに参加すること、外部の講演活動、教育活動、自治体の相談活動などです。

(3)年収

一般民事系法律事務所の年収は、自己事件を受任できるかどうか、完全給与制か歩合制かなど報酬形態によって、幅があり過ぎて一般化することは困難です。

下記は、勤務弁護士としてのおおよそのモデルとお考え下さい。

  • 1年目 360万円~600万円
  • 3年目 360万円~700万円
  • 5年目 400万円~1,000万円
  • 10年目500万円~1,500万円

(4)キャリアパス

オーソドックスな一般の事務所の場合は、5年から10年以内に独立することが前提です。

パートナー制を採用する事務所の場合は、やはり10年以内くらいに、その事務所のパートナーとなるか、他の事務所でパートナーとなるか、独立するか道が別れます。

独立する場合でも、パートナーとなる場合でも、同じく必要なのは、集客力です。業界用語でいえば、事件を引っ張ってくる力です。

第一に、人脈です。個人や中小企業を顧客とする場合、一番の集客ルートは、口コミです。満足してくれた依頼者が、次の依頼者を紹介してくれます。
また、弁護士の客は弁護士とよく言われます。弁護士仲間から依頼者、事件を紹介される機会は実に多いものです。弁護士会活動、委員会活動、弁護団活動などを通じて、業界内の人脈を確実に増やしておく必要があります。

第二に、営業力です。顧客との人間関係の構築は重要で、依頼者に自分のファンになってもらえとも言われます。同窓会、趣味の会、自治会、政党、ロータリークラブ、ライオンズクラブなどの社会団体、ともなく人の集まりがあれば参加して顔を得ることが得策です。

第三に、得意分野です。一般事務所の場合、専門分野を極めるのは時間的に難しいことは事実ですが、意識的に研鑽する必要があります。 まだ誰も手を出していない分野であれば、ハードルが低いはずです。もっとも、そんな分野を見つけることができればですが。

(5)転職するメリットとデメリット

①メリット

事務所次第ですが、多くは所属弁護士の各種活動は自由です。弁護士の肩書があれば、多くの団体で歓迎されますので、自分の信念に応じた社会活動が可能です。

特別に事件を特化した事務所でない限り、取扱事件はバラエティに富んでいますから、あらゆる案件を経験できます。企業法務系やインハウスローヤーでは刑事弁護は担当できません。

これも事務所によりますが、多くの事務所では、自己事件の受任が可能で、自分の顧客を得ることができます。これは来るべき独立にあたって重要です。

②デメリット

企業法務系事務所と比較して年収は低いと言われています。
ただ、高年収の企業法務系とは、要するに大手の4大事務所ですから、高収入なのは当然であって、一般の事務所と比較すること自体が、あまり意味はありません。

大企業をクライアントとする大規模なプロジェクトに関わる機会は少ないかもしれません。

もっとも、公害事件、薬害事件、国賠事件、冤罪事件など、国や大企業を相手とする、歴史に残る、法律家としてやり甲斐のある事件を担当することが可能です。事務所に依頼がなければ、自分で弁護団へ参加すれば良いのです。

特定の事件に特化した事務所以外は、幅広い案件を担当することになるため、特定分野を深く研究する時間がなかなかとれません。得意分野を作るためには、意識して研鑽する必要があります。

企業法務系法律事務所

(1)特徴

平成初期までは、弁護士が20名もいれば大事務所と言われました。当時も高給与の渉外事務所はありましたが、新人弁護士の大量採用はありませんでした。

司法試験合格者数が極わずかで超売手市場だったこと、渉外事務所における留学の費用負担や年収1千万円程度の初任給は魅力であるものの、法廷活動ができず、帰宅できないほどの激務といわれました。

そして、一般事務所でも初任給は年収700万円が最低と言われ、あえて厳しい渉外事務所に入る必要もないと思われていたのです。

ところが、2000年代に入り、司法試験合格者数が増大すると、新規合格者の採用が容易になり、巨大化が可能となりました。

また、業務の主流は、渉外から国内大手企業の法務案件にシフトし、大規模事務所同士の合併や分裂が繰り返され、かつてからは想像もできない大きな規模に成長していきました。

すなわち、大規模な企業法務系事務所は、その歴史がまだ20年程度の新興勢力なのです。弁護士数は、300人から500人規模です。

現時点では、企業法務系法律事務所は、国内大手企業をクライアントとすることに、ほぼ特化した事務所と言って良いでしょう。

(2)業務内容

国内大手企業を顧客とする企業法務ですが、予防法務だけでなく、訴訟担当も含まれます。
ジェネラルコーポレート(一般企業法務)に留まらず、ファイナンス、企業買収など、クライアント企業の業務内容次第で、あらゆる案件が含まれることになります。

近年では、海外支店を展開し、常駐弁護士を置く事務所も現れました。尚、高度な英語力が、ほぼ必須とされています。

(3)年収

下記は、ひとつのモデルとしてお考え下さい。
必ず、この金額となるとは言えませんが、高額の所得水準であることは理解できると思います。

  • 1年目 1,000万円~1,200万円程度
  • 3年目 1,300万円~1,500万円程度
  • 5年目 1,500万円~

(4)キャリアパス

全員ではありませんが、数年内に海外留学の経験を経ることになり、また中央官庁や企業に出向するケースもあります。

事務所によりますが、10~15年程度を経て、パートナーに昇格するか、退所して別の事務所のパートナーとなるか、あるいは独立して事務所を開業するかの道をとります。

ここからインハウスローヤーとなるケースも近年は増加しています。

(5)転職するメリットとデメリット

①メリット

規模、金額の大きい商事案件にかかわることができます。
なんと言っても高収入です。

②デメリット

事務所から、自己事件の受任を禁止されている、禁止されていないが、事務所の事件で忙しく、事実上、受任できないケースが多いです。これは、もしも後の独立を考えているならマイナス要因です。

企業法務に特化しており、刑事事件や一般民事事件など、幅広い業務はできない場合が多いです。また、事務所や部署によってはデスクワークばかりで、訴訟活動は経験できないケースもあります。

非常に激務と言われます。深夜まで勤務し、帰宅後に朝10時出所というハードな日々が続くこともあります。

アソシエイトからパートナーになることは、競争率の高い難関です。激務の日々を何年も過ごし、しかも狭き門に入らなくてはなりません。

検事総長や最高裁長官を目指すのと変わらない難関かも知れません。

企業法務部(インハウスローヤー)

(1)特徴

インハウスローヤーは、弁護士資格はあっても、会社従業員であり、その業務は、当該企業内部の仕事にとどまります。したがって、一般の弁護士のように、多彩な事件にかかわり活動することはできません。

しかし、外部の弁護士(企業法務系事務所の弁護士を含めて)が、あくまでもオブザーバーに過ぎないのに対し、インハウスローヤーは、プレーヤーとして、主体的に、プロジェクトに関わることができます。

企業が、あるプロジェクトを立ち上げ、それに法的な課題がある場合、外部の弁護士は、企業から質問されたときに、それが法的に可能か否かを判断すれば足ります。違法の可能性が高ければ、できないと伝えるだけです。

他方、インハウスローヤーは、プロジェクトの始動当初から、これに関わり、法的に問題が生じれば、これを解決し、企業目的を実現することが求められます。

何故なら、インハウスローヤーは、企業というプロジェクトチームの一員であり、当事者だからです。ここが最大の違いです。

(2)業務内容

インハウスローヤーの業務は、当該企業の法務部員としての仕事です。
経営幹部及び企業内各部に対しては、法的アドバイザーの役割であり、外部の顧問法律事務所との関係では、自社を代表しての窓口役ということになります。

その企業内の問題に関する限り、業務内容に限定はありません。プロジェクトスキームや契約書の検討、コンプライアンス保持、知財等の権利管理など多様です。

訴訟案件は顧問法律事務所と協働して対応することになります。一人が担当する範囲は、企業規模に応じて様々です。

尚、企業の事業内容によりますが、法務部を充実させるほどの規模の企業で、今日、海外市場を求めていない例は少ないと思われ、英語力を求められるケースが通常です。

(3)年収

当然、その企業の規模、業績に大きく左右されます。

企業法務系法律事務所と比較すると低額と思われますが、福利厚生が充実していることや定年まで安定して勤務できることが前提となっていること、労働者である以上、常識はずれの激務はありえないことを考えると、単純な比較は無意味とも言えます。

上場企業のモデル、

  • 25~30歳 400万円~600万円程度
  • 30~40歳 500万円~700万円程度
  • 40~60歳 700万円~1,800万円程度(法務部長か否かなど役職により大きく違います)

尚、弁護士会費は企業側が負担をするのが一般的です。

(4)キャリアパス

司法研修所卒業後、すぐに入社するケースと企業法務系法律事務所に勤務後、転職するケースがあります。

大手の企業法務系事務所出身であると、その企業法務のスキルから、インハウスローヤーへの転職は成功しやすいとされます。

但し、国内企業の場合、弁護士という専門職を招きいれるというよりも、「我社の」、「ファミリーの一員」として迎えるという意識のほうが強い風土があります。

このため、企業内でのOJT、社内研修や各部署の経験年数こそ重視され、これに適応できる若い人材でないと採用されることが難しい傾向にあります。

法務部員となってからは、法務部内での管理職への昇進、法務部長、役員への登用というコースがあります。

(5)転職するメリットとデメリット

①メリット

プロジェクトに主体的にかかわるプレーヤーとなれることです。大企業であれば収入が安定しますし、福利厚生は充実しています。

法律事務所は、企業法務系に限らず、一般の事務所であっても、週休二日を実行することは、まず困難です。仕事が回りません。

この点、インハウスローヤーは、他の社員と同様の労働条件を確保することが可能です。

②デメリット

自ら法廷に立つ訴訟案件の経験はできません。また、刑事事件や人権活動など、幅広い業務・活動もできません。

弁護士資格があっても、一般事件や訴訟事件を経験できないので、定年後に独立開業することは困難です。

まとめ

弁護士の転職先の特徴と転職する場合のメリット・デメリットについて、まとめてきました。

法曹界の門を叩いた時に、既に頭に入っていたことと思いますが、日頃の忙しさで忘れていませんでしたか?

本気で転職を検討される方のお役に立てることを願っています。