弁護士の転職時における面接の傾向と対策、想定問答集

現在、転職活動中の方もいらっしゃるかと思います。
無事に書類審査をパスしたら、次は面接になります。なかには、面接を受けるのは現在の事務所に入所するとき以来という方もいるのではないでしょうか。

社会人経験が豊富でも、慣れない就職面接では緊張する方は少なくありません。

面接に備えて想定問答を作成したいと考えている方もいると思いますが、「現在、抱えている業務があり忙しく手が回らない・・・」などの理由で面接の想定問答を作成する時間がない方も少なくないと思います。

そこで今回は、これまで数多くの転職をサポートしてきた弁護士ドットコムキャリアが、面接での面接官側からの質問意図、回答例、その解説まで説明させていただきます。

面接は個人の資質や相性を確認する場ですので、その人に応じた質問が行われることも予想されますので、一例として参考にしていただければと思います。

想定問答集を準備せずに面接に臨むのは、尋問メモを作らずに、証人尋問に臨むようなものです。アドリブで応答できるから大丈夫だと思い込まずに、慎重に準備をしましょう。

今回の記事をお読み頂ければ一通りの準備をすることができます。

法律事務所編!想定問答集5選

それでは、いよいよ面接の際の想定問答集を紹介していきます。

(1)質問その1

「転職しようと思ったきっかけを教えてください。」

①質問の意図

これは、つまり「今の事務所を辞めたい理由」を聞いています。この質問は鉄板ですから、しっかりと今後の自身のキャリアを考えた上で回答を用意しましょう。

質問の意図は、何か問題を抱えた人物ではないのか、こちらの人的組織に適応する人材かどうかを確認することにあります。

② 回答例

「現在の事務所には、入所以来、様々な案件処理の経験を通じて、本当に多くのことを学ばせて頂きました。

代表の◯◯先生はじめ、事務所の皆様には本当に感謝しており、有難いことに人間関係や待遇面では、現在も全く不満はありません。

ただ、現在の事務所は、大手損保の準顧問事務所とも言える立場になることができ、ここ10年間で交通事故事件の受任数が飛躍的に増え、現在では扱っている事件の7割が交通事故事件となりました。

経営は安定していますし、交通事故については、より専門的な知見を得ることはできていますが、今では、事件の種類が交通事故に偏り過ぎています。

もちろん、交通事故事件のエキスパートを極めるという道もありますが、私は、それに縛られず、民事、刑事を問わず、より広い事件を経験したいと考えています。

ですが、現在の事務所代表者は、今の方向をより進めて、より交通事故事件に特化した専門事務所を目指す意向なのです。

今の職場では、私の希望が叶えられないために、転職を検討しております。」

③解説

退職には、ネガティブなイメージがあります。

面接先の事務所が懸念するのは、次の点です。

  • 退所の理由は人間関係ではないか
  • その原因は転職者自身にあるのではないか

回答では、これらの懸念を払拭する必要があります。

  • 現事務所には感謝の気持ちがある(人間関係が原因ではない)
  • 現事務所の現状と転職者の希望が不適合(不満の内容)
  • 現事務所代表者の将来展望と転職者の将来の希望も不適合(退所しか選択肢がない)

(2)質問その2

「なぜ当事務所を志望したのですか?」

①質問の意図

事務所側がこの質問をする意図は以下の3つです。

  • 「事務所の強みを理解しているか」を通じて事務所に適合する人材か確認したい
  • そもそも前提としてきちんとリサーチしてきたか確認したい
  • きちんと考えて転職先を選んでいるか確認したい

②回答例

※ここは事務所ごとに強みが違うので回答も個別具体的にならざるを得ませんが、参考までに転職先が「一般民事と企業法務を扱い全国展開している総合法律事務所」であることを前提に記載していきます。

貴事務所への転職を志望した理由は貴事務所の「弁護士をもっと身近に」という理念に共感したからです。

なぜ共感したのかは、私の経験とリンクします。

私はおばあちゃん子なのですが、祖母は持っていた土地を騙し取られてしまったことがあります。その時に助けてくれたのが弁護士でした。

今も覚えているのは、「トラブルがあっても弁護士が身近にいれば助けてもらえるんだ」と実感したことです。

この経験がきっかけで、僭越ながら貴事務所の理念と同様に「弁護士がもっと身近な世の中にしたい」と思うようになりました。

これが私が貴事務所を志望した理由です。

また、「私の経験が活かせるのではないか」と思ったことも貴事務所を志望したもう一つの理由です。

私は現事務所でかなりの数の交通事故事件を扱ってきました。

貴事務所も交通事故に力を入れていると思いますので、私の経験が活かせるのではないかと考えています。

現事務所では案件処理を通じて後輩弁護士を育てた経験もあるので、貴事務所でも新人弁護士育成のお手伝いができれば嬉しいと思っております。

③解説

先ほどお伝えしたように回答は個別具体的にならざるを得ません。

ただ、伝えるべきポイントは以下の通りです。まずは面接先の法律事務所のことをきちんとリサーチし、理念などを深く理解した上で以下のポイントを伝える回答を準備しましょう。

  • 事務所の理念に共感していることを伝える
  • 共感している理由を説得的に伝える(自分の過去の経験を踏まえて、自分が人生において大事にしていることと事務所の理念がリンクしていること)
  • 転職すれば自分の強みが活きること

(3)質問その3

「現在の事務所で専門とされている分野の、今後の動向を教えてください。」

①質問の意図

専門の分野での力量を知りたい。

転職者の専門は、既に書類選考の段階で、面接側に伝わっています。面接側でも、独自に、転職者の業績について、調査済みのはずです。知識の有無を確認するような質問は通常はありえません。

むしろ、その分野について、さらに今後、深めようとしているのかどうか、転職先でも熱心に研究してくれるかどうかを聞く質問です。

②回答例

「交通事故は成熟した分野ではあります。しかし、車という道具によって起きる事件ですから、道具の技術の進歩によって、新たな課題が生じます。

近年では、自動運転車の開発競争が盛んで、公道での実験走行も行われるようになり、いよいよ自動運転社会が現実味を帯びてきました。

無事故を志向する自動運転車であっても、過渡期には、当然に、種々の予想できない事故が起こるでしょう。

責任は、運転者にあるのか、自動車メーカーにあるのか、それともインフラを整備する国や自治体にあるのか、現法制では、対応できない新しい問題が次々に生起すると思います。

また、技術の問題と同時に、超高齢化社会が及ぼす影響もあります。運転者も、歩行者も、超高齢化した中で、高速道路の逆走や、運転中の認知症の発症など、これまで例が乏しかった事例が頻発しています。

単純に過去の例を適用して処理すれば済むのか、難しい問題に直面しています。研究課題は尽きない分野です。」

③解説

当然ですが、模範解答があるわけではありません。日頃の研鑽の成果が試される質問です。思う存分、持論を展開して下さい。ただ、御承知のように、お互いに弁護士は喋りだすと止まりません。

今日は、面接される側であり、学会や法廷ではありません。節度を忘れないでください。

(4)質問その4

「今後のキャリアプランをどのように考えていますか?」

①質問の意図

この質問には、3つの意図があります。

  • どうして独立しないのか
  • 将来的には、独立するなり、さらにキャリアを求めて別の事務所に移る可能性があるのか
  • 弁護士としての生き方、覚悟を聞きたい

②回答例

「現時点では、申し上げましたとおり、幅広い案件の経験を積みたいこと、業務に限らず、会務活動や人権活動などに積極的に取り組みたいと考えており、格別、独立することは考えていません。

もちろん、自分の事務所を持ち、独自の理念に基づく活動をすることは、判検事にはできない、弁護士だけに許された世界ですから、興味がないわけではありません。

また、事務所の経営と弁護活動は、別個のものでありながら、弁護士の両輪であって、バランスを保つことが大切だと思っています。

貴事務所で、経営について学ばせていただければ、経営者となる具体的な希望が生じるかも知れません。

しかし、今は、経営より事件、活動に注力したいのです。」

③解説

理念があるなら、独立すれば良い。昔はそうでした。しかし、今は現実味がありません。

今の時代、弁護士であれば、全員、将来の自分の姿を見つけることができず、悩んでいるはずです。正解があるはずはありません。

面接官役の弁護士も同じです。同じ弁護士同士です。真剣であれば、節度を持ちつつ、本音をぶつけ合っても良いのではないでしょうか。

(5)質問その5

「希望年収を教えてください。」

①質問の意図

お互いに意思を固めた後に、希望年収と想定年収に大きな乖離があることが発覚し、話がまとまらなくなってしまうことがあります。

そういったことを避けるために、面接段階で希望年収を確認するということは行われます。

このように考えると、希望年収を確認されるということはある程度脈あると考えられるわけですが、実際は今後の参考までに聞くとことも考えられます。

②回答例

「現在の事務所では、ここ3年の実績は、年単位の契約で、現状は手取りで1,200万円です。ただ、貴事務所の基準等もあると思いますので、ご判断は貴事務所にお任せします」

③解説

ここは非常にセンシティブな部分です。

あまり強く希望を伝えると印象が悪くなってしまうかもしれないので注意が必要です。

回答例では悪印象を持たれないよう、現状の年収を伝えて希望を伝えつつも最終的な判断を相手に委ねるという内容になっています。

ちなみに、エージェントに依頼して転職活動をしている場合はこのようにセンシティブな年収の交渉も一部エージェントに任せることが可能です。

また、現在の事務所が個人受任可能である場合は、転職先の事務所でも引き続き個人受任が可能か確認することをおすすめします。

企業編!想定問答集5選

(1)質問その1

「なぜ法律事務所ではなく企業を志望しているのですか?」

①質問の意図

この質問には、法律事務所編でも述べたとおり、転職に対するネガティブなイメージを前提としています。

すなわち、法律事務所編と同じく、

  • 法律事務所を退所する理由は人間関係ではないか
  • その原因は転職者自身にあるのではないか

という点を確認する意図があります。

ただし、未だに、ある種狭い世界である法曹界に比べて、もはや企業での転職は、通常のことであり、ネガティブな見方一辺倒ではないからこそ、積極的に途中入社を採用しているわけです。

むしろ、企業の面接では、これに加えて

  • 何故、法律事務所ではないのか?

という素朴な疑問に対する回答の方が大切です。

②回答例

「現在の事務所は、幅広い業務を取り扱っていますが、私は、企業法務を希望し、入所の当初から企業法務担当チームの一員としていただき、これまで沢山の企業の案件を担当させていただきました。

もともと、私は、法学部ではなく商学部出身で、ゼミも経営学でした。

卒論を書く過程で、商法の理解が必要になり、指導教授から基本書を推薦していただき、読んだことが、法律学に興味が向くきっかけでした。

ですから、就職先も迷わず、企業法務を担当できる事務所を選んだのです。入所してからは、多くの生の企業法務を担当することができ、夢がかなったと充足感を持っていました。」

「しかし、企業法務を担当するといっても、法律事務所の弁護士は、あくまでもアドバイザーに過ぎません。

企業が立案したプロジェクトについて、その会社の法務部が検討を加え、ある程度、目鼻がついたものが、顧問先である私どもの事務所に上がってきます。そして、それに対し、法的なリスクの有無を判断し、リスク回避の方策を助言するのが仕事です。

もちろん、企業内の法務部門も、他の部門が企画した内容を、法的に精査するわけですから、企業内法律家という意味では受け身かも知れません。ただ、外部の法律事務所と違い、企業内の組織のメンバーであれば、そのプロジェクトの一からの段階から関与することも可能です。

あるプロジェクトが、形になってゆくには、企画から始まって、工場、営業、宣伝とその企業のあらゆる部門がかかわり、それぞれの立場で意見を言い合い、具体化されていきます。

法務という立場からプロジェクトの成功に貢献し、そして組織としての達成感を共有したいのです。」

③解説

何故、法律事務所ではなく、企業なのか?この素朴な疑問に対して、ストレートに回答しています。

行動を評価する者ではなく、行動する主人公に加わりたいという気持ち、傍観者ではなく、当事者になりたいという気持ち、法律家ならば、誰でも抱いたことがある複雑な感情です。

インハウスローヤーを目指す動機は様々です。みなさん、心に秘めた思いがあるでしょう。
それを、説得的に説明できるよう準備しておきましょう。

(2)質問その2

「他の企業ではなく、弊社を志望した動機を教えてください。」

①質問の意図

これは、就職で必ず聞かれる質問です。ただし、弁護士がインハウスローヤーを目指す場合には、この質問に込められた意図は、より強いものがあります。

つまり、あなたは「弁護士」としての活動の場を「企業」に求めているだけなのか、それとも「我社」の「一員」、「ファミリー」となることを求めているのかということです。

未だに横断的な労働市場の形成が弱い我国では、就職は、職に就くのではなく、その企業のメンバーに就くことと評価されます。

弁護士という独立独歩が可能な立場にあるにもかかわらず企業内に入るのは、単に場所として利用するだけなのか、それとも運命共同体となってくれる覚悟があるのかが問われます。

②回答例

「御社は設立から10年で○○業界内での存在も大きくなり、成長力のある会社と評価されています。

これから、さらにトップを目指す意欲で溢れている元気な姿を見て、私も是非、一員として加えていただきたいと思いました。

また、御社の急成長の原動力のひとつが、社員の年齢を問わず、アイディア、企画を積極的に提案させ、良いアイディアを出した社員に対しては、それを事業化する子会社を作り、ただちに社長に就任させて、縦横無尽に活躍してもらうという制度だと知りました。

このため、御社の社内は、活気が満ちていると聞きます。そのような柔軟なシステムであれば、法務の一員であっても、プロジェクトの発案段階から参加することが可能であり、皆と一緒に事業を創造してゆく喜びを感じられると思い、御社を志望しています。」

③解説

本来は、「何故、○○業界なのか?」という質問があるはずですが、それは就職面接一般に共通する話ですので、割愛します。

ここでは、「(○○業界のうちの)何故、当社なのか?」の質問に対する回答例をあげています。リサーチした、その企業の特長を指摘しつつ、その一員となりたい理由を述べています。

ここでは、インハウスローヤーとなりたい動機が、「傍観者ではなく、参加者になりたい。」という前問の回答内容を受けて、柔軟な体制をとっている会社なので、法務であっても、参加者となれるチャンスが大きいという理由を明確にしています。

オブザーバーではなく、プレーヤーとなることが希望であること、この会社なら、それが可能であることをしっかりと伝えています。

(3)質問その3

「企業と法律事務所との仕事の違いはどのような点にあると思いますか?」

①質問の意図

通常の法律事務所勤務とインハウスローヤーの仕事の差異を十分に理解しているかを聞きたいのです。

②回答例

「法律事務所の弁護士は、企業法務であっても、企業から相談のあった案件の判断を行うものです。しかし、企業の一員となれば、受け身、待ちの姿勢ではだめです。

法務に持ち込まれる案件だけを処理するというのでは、顧問先の法律事務所以外に、社内に法務部がある意味がありません。

むしろ、企業の将来計画、経営方針を的確に理解し、先回りして法的問題を洗い出して提示し、企業発展の舵取りに参加できる役割を果たさなくてはならないと思っています。」

「また、外部の法律事務所の弁護士の役割は、持ち込まれた案件につき、法律解釈を適用して、適法か違法かの判断をすることですが、法務部の役割は、それに尽きることはありません。

あるスキームが違法となるリスクが高ければ、その代替案を考えるのも法務の仕事です。

その際、法務は、組織の一員として知りうる社内事情、コストの上限、予算の配分、人材の配置、自前の技術の限界などを総合して検討することになります。

これは、外部の法律事務所が担うことはできません。」

③解説

ここでも、インハウスローヤーは、あくまでも企業という「チーム」の一員、法律担当プレーヤーとして、主体的に企業運営にコミットしてゆくものだという点を強調しています。

外部の法律家であれば、法に照らしてできないことは、できませんよと言えば良いだけです。

しかし、法務部は、「できないから終わらせる」ことが仕事の終着点ではなく、実現することこそが法務の仕事なのです。

(4)質問その4

「キャリアプランをどのように考えていますか?」

①質問の意図

企業側からすると、優秀な人材であればあるほど、自社を単なるキャリアをステップアップするための一時的な場所とする目的ではないかという疑念を持つことが通常です。果たして、自社に骨を埋める覚悟で来てくれるのか心配です。

また、既に法曹資格を取得していることから、それに満足してしまう人材かどうか、今後の伸び代も確認したいところです。

②回答例

「長期的には、仕事をとおして信頼をしていただけるようになり、法務部門の責任者として、大きなプロジェクトにも参加できればと思っています。

例えば、御社は、国内だけでなく、今後、海外を新しい市場としてターゲットにしてゆく御方針と聞き及んでいます。

そういった壮大な計画に参加できれば、一弁護士が経験できることを超えた活動をしたいという私の夢が本当に叶うことになります。

そのためには、これまで業務上で使う機会の少なかった英語も、早期に実務レベルにまで到達できるようにしていきますので、TOEICの勉強、英会話スクールへの通学も始めています。」

③解説

長期的な目標も持っていることを明らかにし、入社してすぐの短期目標をすでに考えていることで、在職し続ける気持ちを具体的に説明しています。

(5)質問その5

「希望年収を教えてください。」

①質問の意図

多くの企業では人件費の予算がありますので、企業側は予算の範囲内の人材であるかどうか判断する必要があります。

また、他部署からの見え方もありますので、法律の専門知識があるという理由だけで高い給与を支払ってしまうと、部門間での関係も悪化しかねませんので、様々な理由があっての質問になります。

②回答例

「現在の事務所では、年収1,200万円ほどです。もちろん同額以上頂ければ嬉しいですが、貴事務所の基準等もあると存じます。最終的なご判断は貴事務所にお任せできればと思います」

③解説

正解例などない質問ですが、この例では、やんわりと今の給与水準以上のものを求めていることを伝えつつも、悪印象を持たれることがないように最終的な判断を委ねる姿勢をみせることが重要です。

なお、エージェントに依頼して転職活動をしている場合はこのようにセンシティブな年収の交渉も一部エージェントに任せることが可能です。

面接後にやるべきことは?

面接後には、記憶換気して、やりとりをメモに残しましょう。面接官との会話では、断片的であれ、その事務所又は企業について、これまで知り得なかった生の情報を得ることができたのです。

これを次に生かさない手はありません。第1次面接のメモは、第2次面接に役立ちます。
仮に、内定に至らなくとも、次の面接のための貴重な模擬試験だったのですから、その成果を無駄にしてはいけません。