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20代若手弁護士が体験した、初の転職活動 – 目指す弁護士像を追求するため、大規模企業法務系事務所へ


今回お話を伺ったのは、企業法務の弁護士としてキャリアをスタートさせたばかりの20代若手弁護士です。同氏は、ロースクール在籍中に予備試験に合格し、新卒で20-30名規模の企業法務系法律事務所に入所。約2年間、幅広くかつハードに案件をこなし、特殊な訴訟なども経験してきました。しかし、自身の意向とは異なる案件を任されることが増えてきたため、転職を検討。大規模な企業法務系法律事務所に年収アップで移籍することが決まりました。本記事では、転職を考えたきっかけや事務所選びの基準、面接で気をつけていたポイントなどについてお聞きしました。

幅広くさまざまな業務を経験したいという思いから中規模事務所へ

——これまでのご経歴について教えてください。

大学時代は、関西の大学の法学部で学びました。入学時はそこまで強く意識していたわけではありませんが、勉強を進めていくうちに法律のおもしろさを感じるようになり、このまま仕事にしていきたいと司法試験受験を考え始めました。周りの先輩などを見ていても、同様の進路に進む人が多い環境でしたね。

大学3年のはじめには予備校の講座を使って試験対策の勉強を開始し、ロースクールを受験。東京の大学のロースクールに入ることにしました。漠然とではありますが、当時から企業法務をやりたいと思っていたので、東京のほうが適した環境だと考えました。ロースクール1年目の途中で予備試験に合格したため、ロースクールを中退し、司法試験を受けて修習へ進むことにしました。

ただ、就職先は、なかなか決まらなかったですね。当時は、早い段階から専門化を図るのではなく、幅広くさまざまなことを経験してみたいという思いが強かったのですが、大手事務所の場合は、プラクティスチームや部門が分かれていたり、特定のパートナーとだけ仕事をしたりという形になってしまい、はじめから専門分野が絞られてしまうのではというイメージを持っていました。実際には、もっと幅広く仕事ができるのかもしれませんが、いずれにしても自分としては、得意分野を早く見つけるよりは、ひととおりいろんな業務を経験したいと考えていたので、中規模事務所を中心に受けていました。とはいえ、中規模事務所は採用枠が限られており、互いにフィーリングが合わないとなかなか採用に至らないということで、苦労しました。

修習が始まるまでにはなんとか就職先を決めたいという思いで、司法試験の合格発表後は、その成績表を資料に加えながら就職活動を継続しました。司法試験の成績が良かったので、そこも評価していただければ、と。修習地に関東圏を選んだのは、就職活動が終わらないことを想定し、東京の事務所を受けられる範囲にしようと考えたためです。しかし、秋頃に説明会を開催していた事務所と縁があり、修習の前に無事に内定を得ることができました。説明会に参加した流れで面接を受けてパートナーの代表に気に入っていただけたので、すぐに決まった形です。

——企業法務の事務所を中心に就職活動をされていたとのことですが、企業法務のどこに魅力を感じられていますか?

一般民事に比べて企業法務のほうが、法律論に触れる機会が圧倒的に多いイメージを持っていたためです。企業法務は、紛争になっていない段階から、新たに立ち上げるビジネスが規制に反していないか、契約書やスキームにどのようなリスクがあるのか、法律を踏まえた理屈を立てながら、1つひとつ論拠を探して論理的に考えてチェックしていく流れになると思いますが、そうした営みが自分の性格や興味に合っていると感じました。あとは単純に、クライアントの新しい技術やサービスの話を聞いたり、それに合うように契約書や利用規約を作ったりといった、新しいことに対する知的好奇心を満たせる仕事が多い印象でした。

家事事件を扱わなければならなくなったことで転職を意識

——事務所入所後の2年間の歩みについてお聞かせください。

事務所は20-30人規模で、日々継続的にいただくさまざまな依頼をすべて受け付けるというような、雑多な雰囲気の事務所でした。なので、私自身も、契約書のレビューから、利用規約の作成、組織再編、訴訟対応まで、来たものをいろいろとやらせていただくというような形で業務を行っていました。1年目はコロナ禍が直撃していたということもあり、アサインされていたM&A案件が本格的に始まる前に止まってしまうということもありました。

——働き方についてはいかがでしたか。

1年目は、契約書レビューや法律相談、それに伴うリサーチといった、いわゆる一般企業法務が多かったですね。労働時間はそれなりに長かったですが、1年目で経験が浅く時間掛かっているというのもありましたし、私自身は長時間労働があまり苦ではないので、主観的にはそこまでしんどいと感じたことはありません。

ただ、1年目に担当した大きな訴訟事件には苦労しましたね。技術系の訴訟ということもあり難易度が高く、ヒアリングや資料集めのために出張を繰り返す時期が1年ほど続きました。その事件は法律論も大きな争点になっていたのですが、かなり細かい法律で国内の文献がほぼ見つからない状態。その分野の学者の方にお話を伺ったり、技術系の書籍を証拠として引用したり、海外の文献を引用したりと、リサーチにかなり時間を掛けました。とはいえ、やはり法律が好きだったのでおもしろくやっていました。

——そうしたなか、転職を考えられるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

2年目くらいから家事事件を振られるようになったのがきっかけでした。自分は性格上、家事事件に苦手意識を強く感じています。法曹を目指す動機としても、人の気持ちに寄り添いたいとか、困っている人の助けになりたいといった部分はあまり強くなく、将来的にも扱わないようにしようと考えていたんです。

事務所としては家事事件もできるようになってほしいという思いがあったのだと思いますが、自分のなかではそれが強いストレスになってしまっていました。面談などではその旨を上司に伝えていたのですが、私だけ特別扱いするわけにもいかないでしょうし、このまま事務所にいても状況は変わらないと考えました。

——企業法務系の事務所で家事事件まで扱うことを新卒の就職活動のタイミングで想定するのは難しかったかもしれません。振り返ってみて、入所する前に気づくポイントはありましたか?

今になって思えば、他士業の先生からの紹介で事件を受ける先生だと、家事事件も紹介されがちなのかもしれません。あとは、転職活動の際にさまざまな事務所の採用条件を見ていたときに気づいたのですが、大抵の企業法務系の事務所は「企業法務系事務所の出身者以外は採用しない」という方針を明記しています。逆に企業法務系事務所なのに「一般民事出身者でもOKです」とある場合は、実際にそうした仕事が来るからなのかもしれないと思いました。なので、新卒就活の場合でも、中途採用でどのような人材を募集しているか確認すると、1つの判断基準になるかもしれないですね。あとは、今在籍しているアソシエイトの出身事務所などもチェックしてみると良いかもしれません。

面接時の逆質問では入所の意思を伝える

——転職活動はどのように進められていきましたか。

2年目の年末の賞与が自分の想定より低かったことで本格的に転職を考え始めました。ただ、当時はちょうど多忙期だったため、仕事がある程度落ち着いたタイミングで、転職に成功していた友人の紹介を受けて弁護士ドットコムキャリアに相談してみました。

——エージェントを利用することへの不安はありませんでしたか?

転職自体が初めてで、エージェントは使ったことがなくよく知らなかったので、特に信頼感も不信感もなかったというのが正直なところです。友人がエージェント経由で転職を決めていたので大丈夫だろう、という程度の気持ちでした。弁護士ドットコムキャリアからは、当初8つほど候補を提示していただきました。職務経歴書と履歴書を書いて、それらの事務所に片っ端から応募していきました。

——自己応募と比べて、エージェントを使うメリットはどのように考えられていますか。

「ここはこういう事務所ですよ」という説明を事前にある程度聞けたことは、エージェントを利用して良かったポイントだと思っています。ホームページや情報誌などでも情報を得ることはできますが、それだけだと、詳細や実態まで把握するのは難しいので。

——転職先の事務所は、どのような方向性や基準で考えられたのですか。

私の場合、「家事事件を扱いたくない」と「賞与が低い」というネガティブな理由から転職を考えはじめましたが、逆に言えば、その他の案件に関してはまったく不満はなかったので、引き続きある程度の規模で、それなりの種類の案件をひととおり扱える企業法務系の事務所を考えていました。

その事務所が取り扱っている分野については、一度自分のほうでも確認するようにはしていました。特に、訴訟の経験を積んでおかないと自分の腕に不安が残ると思ったので、訴訟案件が多いところを優先的に見ていました。あとは、前の事務所で重点的に扱っていた分野についても、引き続き経験や知見を伸ばしていきたいという思いもありました。

——面接対策として意識されていたことはありますか。

強いて言えば、「こちらから逆質問をする際には、入所の意思が伝わるようなものが良い」というアドバイスをコンサルタントの方から受けていたので、たとえば「執務スペースを見せてください」とか「判例検索データベースには何を使っていますか」とか「図書室はどれくらいの広さですか」といったように、実際に自分が仕事をするうえで気になるポイントを聞いていくようにしていました。

新卒と中途では、就職活動のイメージは大きく異なる

——これから新しいステップに進むにあたって、期待や意気込みがあればお聞かせください。

正直申し上げると、新卒で初めて入所する事務所としては選択を誤ったという感覚はありません。メンバーは皆さん良い方でしたし、おもしろい案件をたくさん担当させていただけて、非常に感謝しています。それを踏まえても、自分には耐え難いところが出てきてしまったということです。

せっかくなので新しい分野にも挑戦できたらという気持ちはありますが、やることは大きく変わらないと思うので、引き続き楽しく企業法務の案件をやっていけると良いなと考えています。

——最後に、キャリアに悩んでいる若手の弁護士に向けてメッセージをお願いします。

もし、今の状況に疑問を感じているのであれば、転職を検討してみたり、とりあえずエージェントに登録して話を聞いてみたりするのも良いかもしれません。というのも、私の場合、実際に転職活動をしてみたことで、自分の年収が相場から半額くらい低いという実態が明らかになったためです。他の事務所を見てみたことで、自分のキャリアをより客観的に考えられるようになりました。

また、新卒での就職活動とは異なり中途の就職活動は、応募資料に職務経歴書が増えるため、面接のときに話せる内容は大きく変わります。「実際にどんな業務を担当しましたか」とか「こういう案件は好きですか? 嫌いですか?」といった、経験を踏まえた回答が求められる場合が多く、私の回答に対する反応も、新卒のときとは比べものにならないくらい良かったです。私のように新卒時の就職活動に苦労したという人も、あまりそのときのイメージを引きずらずに、転職活動にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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