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女性弁護士の転職活動 出産・育児、夫婦で経営していた従来型法律事務所から大規模事務所への転職……多くの転機を乗り越えてきた今思うこと


今回ご紹介するのは、民事系で長年のキャリアを持つシニア女性弁護士の転職体験談です。二人の子どもの出産・育児を経験しつつも、弁護士業は引退せずに継続。夫婦で長らく事務所を経営してきました。その後夫の都合で転機が訪れ、全国展開する事務所で働くことを決意します。そして、今年からは事務所を変えて、また新たなチャレンジをスタートさせる同氏。人生の岐路に立つ若手弁護士たちに対して「あがいても良いし、かっこよくなくても良いので、自分のやりたいことをどんどんやってみてほしい」と語ってくださいました。

女性弁護士のロールモデルが少ないなか、育児と仕事の両立に挑む

——まずは、これまでのキャリアについて伺っていければと思います。

大学は法学部だったので、周りの影響もあって司法試験に挑戦。大学を卒業して3年目くらいに合格しました。公務員という選択肢も考えたのですが、転勤のない法律事務所の弁護士として働くことを選びました。

また、ちょうど弁護士になるタイミングで、同期の修習生だった夫と結婚。それぞれ違う事務所に勤務弁護士として入所し、キャリアのスタートを切りました。当時はまだ女性弁護士が少なく、選択肢が限られていましたが、弁護士が4-5人所属していて、女性弁護士も活躍している事務所に採用されました。

結婚した年に上の子を出産しましたが、先輩の女性弁護士も小さいお子さんをお持ちでしたし、ボスの理解もあったので、そのまま働き続けました。ただ、入所数年後に二人目の妊娠がわかった段階で、ボスや後輩に負担をかけないよう退職を決めました。ちょうどそのとき、夫が勤務していた事務所の若手が集まって新しい事務所を立ち上げるという話があったので、籍はその事務所に置いて、家庭を優先しながら自分のペースで仕事を続けることにしました。

——出産・育児を経験しながらも、引退せずに弁護士業を継続されたんですね。

結婚して子供のいる家庭を築きたいと思う一方、仕事もしたいという気持ちはずっと持っていましたし、いったん仕事を辞めてしまうと人に会うのも怖くなるという話を先輩から聞いていたので、感覚を忘れない程度には続けていこうと考えていました。

最初に入った事務所の先輩女性弁護士も、二人のお子さんを育てながら働いていらっしゃったので、やろうと思えばできるという気持ちもありました。実家が近かったことで親のサポートがあったのも大きいです。夫も同じ職業なので仕事への理解があり、子どもを裁判所に連れて行ったこともあります。私が証人尋問しているあいだ、夫は控室で子どもを見ていたり……。当時は大変でしたが、今振り返ると良い思い出ですね。

——当時は子供の有無に関わらず、女性の弁護士として働く難しさもあったように思います。

そうですね。当時、女性弁護士はやはりまだ数が少なかったので、「先生だって(女性だけど)資格を持っていらっしゃるわけですからね」なんて言葉を投げかけられることもありました。面談の際に「あ、女だ」という顔をする方もいらっしゃったり……。ただ最近は、どの業界でも女性が活躍するようになり、ほとんどそういうことはありません。

とはいえ、弁護士が1-2人で経営している事務所はやはり零細企業なので、出産や育児で休まれてしまうと運営が大変になってしまうことも事実です。そういう意味では、女性は大きい事務所のほうが比較的働きやすいかもしれませんね。

——その後、独立されてご夫婦で事務所を運営されていたと聞いています。

下の子が産まれて子育ても一段落したころ、私を引き連れて夫が独立。二人で新しい事務所を作ることにしました。ただ、今から数年前に夫が体調を崩し通院をしなければならなくなりました。そこで夫はマイペースで仕事を続けることにして、私自身は将来のことも考えて他事務所に移籍することにしました。私は数年前に全国展開している民事系の事務所に入りました。

人の話を聞いてストーリーを見出すことに興味を持てるかどうか

——これまで取り扱ってきた分野について教えてください。

いわゆる一般民事を幅広く担当してきました。特に最初の事務所は、依頼されたものはなんでもやるという方針だったので、一般の個人債務整理や中小企業同士のトラブルまで、さまざまな案件に取り組んでいました。

——最近では企業法務に絞って転職活動をされる方も多いですが、一般民事の醍醐味や向き合い方についてどのように考えられていますか。

私が弁護士になった当時は、企業法務という領域は今ほどクローズアップされていませんでした。弁護士たちも、おそらく何でもやる覚悟を持っていたように思います。私としては、トラブルを解決できたときは本当に嬉しいですし、相手が喜んでくれるという醍醐味を感じています。ただ、同じことを説明しても理解してくださらない方は一定数いらっしゃいますし、そこに苦手意識を感じてしまう気持ちもわかります。

人の話を聞いて、ストーリーを見出すことに純粋な興味を感じる人のほうが一般民事に向いているかもしれませんね。人様の人生を垣間見ることができるのは興味深いですし、自分のためにもなります。口に出さなくても「へー、そんなことがあるんだ」と思えると、普段の仕事の大変さが相殺されるかもしれません。

——前職の事務所でのご経験について伺えますか。これまでとは少し異なる環境だったと思いますが、新しく得た知識などはあったのでしょうか。

前職の事務所では、普通の事務所ではあまりやらないような案件や、これまで自分が経験してこなかった分野なども扱っていたので、毎日が勉強でした。書籍も読みましたし、私よりもずっと若い先輩弁護士に質問することも多かったです。カルチャーもこれまで経験した事務所とは大きく違っており、新鮮でしたね。

求人サイトを見ているだけではわからないリアルな部分を知れるのがエージェントの良さ

——転職を考えるようになったきっかけについて教えてください。

弁護士も事務員の方も良い人たちばかりで、同僚には恵まれていたように思います。ただ、組織の方向性については自分の考えと合わず、疑問に感じることも多かったです。査定にもあまり納得できず、またそれを指摘できないような空気もあり、環境を変える必要があると感じるようになりました。弁護士の求人サイトを見たり、公務員に転職することも検討したりしていたなか、弁護士ドットコムキャリアをたまたま知り、相談してみることにしました。

——エージェントを利用することに対する不安はありませんでしたか?

まったくないわけではありませんでしたが、弁護士ドットコムはいろんなサービスを手掛けていて、名前もよく知っていたので、親近感や信頼感がありました。求人サイトの情報だけを見ていても、実際にはどのような人材が求められているのか、その事務所の本音やリアルな部分がわからないことにも課題を感じていました。

弁護士ドットコムキャリアのコンサルタントの方からは、最初に複数の候補を提案いただき、そのうち数件に対して応募してみました。もちろん募集要項は自分でも確認しますが、その事務所が実際にどのような人材を採りたいと考えているかというところまで教えていただき、大変ありがたかったです。

——面接にあたって、具体的に準備したことが何かあれば教えてください。

コンサルタントの方から模擬面談を提案していただいたので、Webで受講し、アドバイスもいただきました。年齢を考えると「新しいことでも何でも勉強します」とアピールするよりは、後輩に教える立場であることを意識したほうが良いという指摘を受けましたが、振り返ってみると本当に適切なアドバイスだったように思います。

自分が思っているよりも、実際にはなんとかなる

——新しい事務所ではこれからどのようなことに取り組まれる予定でしょうか。

アソシエイトの枠での応募でしたが、プラクティスグループの立ち上げや、一般民事のなかでも複雑な案件を担当することになっています。事務所の形式や環境は前職とは大きく変わらないので、そこに対する不安はあまりありません。むしろ、従来ずっと取り組んでいて、前職では扱っていなかったような案件にもまた携われるようになるので、長年の経験が活かせるように思います。

——最後に、人生の岐路に立って悩んでいる若手弁護士の皆様へメッセージがあればお願いします。

自分が何にいちばん価値を置いているか、ということが重要ではないでしょうか。どうしても家庭を一番にしていきたいということであれば、それはそれで良いと思います。ただ、自分が思っているよりも、実際にはなんとかなる、ということは頭の隅に置いておいてほしいですね。あがいても良いし、かっこよくなくても良いので、自分のやりたいことをどんどんやってみることが大切です。人の力も借りながら、果敢に取り組んでいただきたいと思います。そのほうが、後で振り返ったときに悔いがないですし、思わぬ実りもあります。

特にお子さんをお持ちの場合は大変なことも多いですが、子どもはいつか育つものですし、親が頑張っている姿を見せていれば、いざこざがあったとしても、絶対に良い子になります。うちの子どもたちも、理解のある人間に育ちました。あまり心配しすぎず、若い力を大いに発揮して頑張っていただけたらと思っています。

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