弁護士ドットコムキャリア

安定せず変革し続ける環境で挑戦していきたい – 多数の業界・企業を経験した先に見えた世界


今回ご紹介するのは、製造業、小売業、広告業など9社に渡って企業法務としての幅広い経験を積んできた40代後半の男性です。この春、常に変化のある環境に身を置いていたいという理由から、また新たな挑戦をスタートします。インタビューでは、法務としてのその異質な経歴やスキル、マインドセットについて深堀りしました。

営業からフランチャイズ法務に。法務でありながら現場を走り回った8年間

——大学卒業後、営業職からキャリアをスタートされていますね。

当時にしては珍しく法務職での新卒採用でしたが、結果的には営業職へ配属されました。将来的には法務をやりたいと上司に伝えていましたが、その見込みはないとのことだったので、約1年半務めた後にたまたま法務職の募集をしていた小売企業へ転職することに決めました。

——2社目ではどのような業務を担当されたのでしょうか。

フランチャイズの審査業務が主でしたね。フランチャイズの加盟申込者がフランチャイジーとしてふさわしいかどうかや店舗候補地や店舗建物の不動産の権利関係を審査するというもので、一般的な企業法務の仕事とは少し異なります。また、同社では、フランチャイジーのトラブルはフランチャイザーがサポートするという方針だったため、全国津々浦々を回り、被害を訴えた方から話を聞き、さまざまな解決策を提示するということも行っていました。当時はまだ若かったのでなかなか信用してもらえず、まずは打ち解けるところから始めていましたね。

法務立ち上げのポイントは、“かゆいところに手が届く存在”であろうとすること

——小売企業に約8年勤務された後は、部品メーカーで英文契約含む契約法務を、電子機器メーカーで法務部門の立ち上げを経験されました。法務部門の立ち上げで苦労された点はありましたか。

「法務」という名前がついている時点で、社内の皆さんに警戒されてしまうんですよね。「法務って何なんだ」「面倒なことになるんじゃないか」と。今まで自由にやってたことに対して制限をかけられたり、営業成績の邪魔になってしまったりするのではという先入観が社内にあったので、まずはそうした誤解を解くところから始めました。

——社内の関係構築は具体的にどのような形で進められたのでしょうか。

“かゆいところに手が届く存在”であろうとすることを心がけました。「取引先からこういうことを言われたのだけど、どうしたらよいのか」といった相談に乗ったり、場合によっては同行して相手方と話をしたり、債権回収に直接出向いたり……こうして1年ほどかけて実績を積み上げていくことで、法律関係だけでなく何でも相談できる人なんだという認識を持ってもらえるようにしていきました。そこからは次のステップとして社員のみなさんに契約の重要性を理解してもらい、徐々に法務の体制を作り上げていきました。

——まずは自分の足を動かして現場の方々のためにご尽力されたことで、仕事が進めやすくなったというわけですね。

そうですね。法務という存在は、現場からすると便利なところもあれば窮屈なところもある。これはどの会社でも同様だと思います。だからこそ、特に立ち上げのフェーズでは、法務がいたらどのように便利になるのか、現場の方々のメリットをしっかりと提示することが大事になります。「何をやっているのかわからない」「邪魔ばかりする」という先入観を解きほぐして、「あいつ、なんか役に立つな」という印象を持ってもらえれば、自ずと仕事が進めやすくなっていきます。

市場再編、吸収合併、IPO……企業の変革期に立ち会い続けた4年間

——その後、上場企業のコーポレートガバナンスを経験したいということで広告業界へ転職されました。

同社では、法務部ではなくコーポレートガバナンス室に所属し、機関法務やコーポレートガバナンスを中心に担当することになりました。

——それまでのご経験が活きた部分はありましたか。

法務とは少し違うところかもしれませんが、それまでのキャリアのなかで英語をやってきていた経験は活きたかもしれません。同社は海外に大きな関係会社を持っており、幹部同士のあいだで誤解やすれ違いが生じることがあったのですが、英語力と人間関係構築力を活かしてうまく仲立ちすることができました。また、当時はコーポレートガバナンス・コードへの対応がスタートした直後で、コードのコンプライのために選任した社外取締役と社内の業務執行取締役とのコミュニケーションが密にはとれていなかったため、その仲をうまく取り継ぐといったこともしました。

——そして、そこからさらに転職され、複数の企業で東証市場再編に関わる仕事やIPO関連業務などに携わられています。

当時東証一部上場企業だったメディア関連企業は、市場再編によってプライム市場に残れるか残れないかが課題となっていました。プライム市場に残るためには、成長力はもちろんですが、ガバナンスやコンプライアンスも重要となります。そこに対してやるべきことを行い、海外機関投資家の投資対象となることによって時価総額の向上にも貢献し、結果としてプライム市場に残ることができました。ただ、同社に誘ってくれた人が辞めてしまったことで、転職を余儀なくされました。次の会社でも東証市場再編を受けてさまざまな対応を検討していたのですが、結果的に他社へ吸収合併されることになり、吸収合併に向けた法務のほか、総務、人事周りの業務も私が担当していました。
その後は、外資系企業にて法務部門の立ち上げを任されることになりました。私の入社以前は、法律に関する社内の仕組みはほぼ何もない状況だったので、法律相談できる体制づくり、契約フローの構築、就業規則を含めた規程関連の整理、リーガルテックを活用した契約業務効率の向上、信用調査や反社チェックのフロー整備など、さまざまな業務を担当しましたね。そして、次に転職した内資系企業では、IPO関連業務に携わりました。

安定した環境で働くよりも、変化しつづける環境に身を置きたい

——ここ数年間は、東証市場再編の影響を受けて、上場準備や合併など、変化の大きなフェーズの企業に在籍されることが多かったと思います。そうしたなか、今回の転職活動ではどのような点を意識されていたのでしょうか。

これまでの経験から、大企業の安定した環境で働くよりも、会社の成長過程や問題ごとの解決に関わることで、自分自身はもちろんその会社も成長できる環境に身を置くことのほうが自分の興味に合っていると考えていました。転職先の会社では、常に挑戦を続けていく意向を社長が示しており、変革し続ける環境で働いていけそうだというイメージを持つことができました。
また、自分自身の経歴と転職先の会社が求めている人材とのミスマッチがないよう気をつけていました。会社によっては契約法務に特化した人材が欲しいというケースも多いですが、何でもやりたいという考えを持つ私がそこに入っても合わないと思います。その会社が企業法務人材に何を求めているのか詳細に聞き、自分の意向と合うかどうかきちんと確認することが大切だと思います。

——そうした考えのもと、今回の転職の決め手になったポイントはどこにありましたか。

ひとつは人ですね。この会社の社員の方々と一緒に仕事してみたいと思ったことは大きかったです。また、この会社であれば、法務だけではなく総務や人事周りまで幅広く担当してきた経験を活かしながら、社内の皆さんのお困りごとを解決するためのサポートができそうだとも感じました。
次の会社は数十名程度の規模で、現在2名の法務担当者がいます。それなりに法務の重要性を感じていながらも、法務のバックグラウンドを持つ担当者はおらず、実質的な部分が伴っていない点が課題です。今後、規模拡大を目指していくなかでは、法務体制を整備していく必要がありました。現状では外部弁護士に頼っている側面も大きいので、自分が中に入ることでより現場を理解し寄り添ったサポートを行っていきたいと思っています。

業界によって法務の考え方は大きく異なる

——小売業から製造業、広告業までさまざまな業界を渡り歩いてこられたご経験を振り返って、業界ごとの特長や仕事内容の違いをどのように感じられていますか。

たとえばメーカーであっても、購買をメインとしている法務と販売をメインにしている法務とでは、考え方はまったく逆のものになります。機器メーカーでは、最終商品を市場に出すための法務がメインであり、売る方をサポートしてもらいたいという要望が強かった一方で、部品メーカーではどちらかというと共同開発や調達に重きを置いていました。また、広告企業では、コンプライアンスを重視した慎重な法務というよりは、いかにクライアントのためにギリギリのところを攻められるかという視点が求められましたね。
自身の好みや経験、スキルセットによって、合う業界、合わない業界はあると思います。転職活動される方にとっては、企業法務の業務内容はもちろん、業界という面でも自分の得手不得手を考えていく必要があるでしょう。

——今回の転職に際して、弁護士ドットコムキャリアを利用してよかったと思う点はありますか。

他の人材エージェントも利用していましたが、正直どこも似たりよったりの求人を紹介されることが多かったです。今回の転職先として選んだ企業をご提案していただいたのは、弁護士ドットコムキャリアだけでした。私の経歴を見た担当コンサルタントの菰田さんに、真っ先に紹介していただいたんです。
また、直近で短期離職を繰り返している私の経歴に対して、他社のエージェントでは「短期間で転職を繰り返してるのはかなり不利ですけど、頑張りましょう」とネガティブに捉えられることが多かったのですが、菰田さんには、「見方を変えればきちんと強みになります」とポジティブなご意見をいただきました。

——最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

転職先は、現在の事業を拡大させ、会社を成長させながら、新しいものを生み出していくことを目指す組織です。そこに対し、企業法務担当としてサポートできるところはサポートしつくしたいと思っています。また、プラスアルファとして、自分自身の経験を活かし、IPOやコンプライアンス、リスクに関するコンサルティングをメインに行う事業を立ち上げていければとも考えています。経営陣には前向きに捉えていただいているので、新たな挑戦をしていきたいですね。

弁護士ドットコムキャリアのエージェントサービス登録(無料)はこちらから。
必要なタイミングで専任のコンサルタントが誠実にご支援いたします。

新着求人情報一覧

専任コンサルタントがあなたのご希望をお伺いします。
お気軽にご相談ください。

無料 / 非公開求人多数 / 秘密厳守