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弁護士が加入する社会保険は?種類・加入条件・保険料をお得に抑える方法を紹介

保険料を計算するデスク

士業の中でも特殊な労働形態である弁護士は、所属する法律事務所によって労働契約の内容が大きく異なります。契約内容によって加入するべき社会保険の種類が変わるため、自分がどのケースに該当するのかを事前に確認することが大切です。

この記事ではおさらいの意味を込めて、弁護士が加入するべき社会保険の特徴や種類、加入条件、保険料を安く抑える方法について解説します。アソシエイト弁護士とボス弁、双方の立場で役立つ情報をまとめているので、ぜひご参考ください。

弁護士の社会保険事情

弁護士が加入するべき社会保険には、どのような種類があるのでしょうか。一般的な社会保険の知識と合わせて、保険の種類や加入条件をわかりやすく整理します。

加入義務がある社会保険の種類

代表的な社会保険は、医療保険・年金保険・雇用保険・労災保険の4つがあります。

40歳以上65歳未満の方は介護保険が加わり、これらの保険制度を総称して社会保険と呼びます。

弁護士も一般的な労働者と同じく、法律事務所(または企業)と雇用契約を結んでいれば、社会保険への加入義務が発生します。

加入するべき社会保険の種類は、所属先の労働形態や契約内容によって大きく異なります。

医療保険を例にとってみると、国民健康保険・弁護士国保・協会けんぽの3種類が存在し、どの医療保険に加入するかは状況によって異なります。

事業形態によって変わる加入保険

弁護士が加入するべき社会保険は、所属する法律事務所が「個人事務所」か「弁護士法人」かによって決まります。

個人事務所は従業員数や規模によって加入するべき社会保険の数が変動するのに対し、弁護士法人は国で定められた社会保険に強制加入することになります。

  • 個人事務所(雇用契約)・・・雇用する従業員数によって変わる
  • 個人事務所(業務委託契約)・・・従業員ではないので加入義務なし
  • 弁護士法人(雇用契約)・・・雇用する従業員全員が強制加入の対象
  • 弁護士法人(業務委託契約)・・・従業員ではないので加入義務なし(法人は加入必須)

業務委託契約なら加入義務は発生しない

法律事務所と雇用契約を結ぶケースを元に社会保険の加入条件を整理しましたが、業務委託契約であれば社会保険の加入義務は発生しません。

業務委託契約は成果物の納品(弁護士の場合は法律業務の完了)を条件とする契約であり、雇用者・労働者の上下関係が存在しない対等な契約方法の一種です。

社会補償が少なく個人で負担する保険料が高くなってしまうのが難点ですが、個人受任がしやすい・自由に経費をきれるといったメリットも多く、弁護士業界には多い契約となっています。

契約によって社会保険の種類や確定申告の処理方法が変わるので、転職先が雇用契約・業務委託契約のどちらを採用しているかを事前に確認しておくことが重要です。

また、業務委託契約は実際の労働内容によっては雇用であると判断されてしまうケースがあるので、ボス弁は後々問題が起きないように労働条件を細かく確認する必要があります。

社会保険の加入範囲と条件

ここからは、弁護士が加入する社会保険の種類を、個人事務所・弁護士法人・企業の3パターンに分けて詳しく解説します。

個人経営の法律事務所の場合

個人事務所の場合は、雇用する従業員数によって社会保険の加入条件が変わります。

従業員を一人でも雇用しているのであれば、雇用保険・労災保険の2つには強制加入することになります。

医療保険・年金保険に関しては任意加入で、法律事務所の規模によっては社会保険に加入していないケースが考えられます。

その場合は、個人で国民健康保険(または弁護士国保)・国民年金に加入する必要があります。

法改正により、常時5人以上の従業員を雇用している場合は個人事務所であっても強制加入の対象となるので、ボス弁の方は注意しましょう。(※令和4年10月から適用)

また、任意加入した場合でも、事業主であるボス弁は事務所の社会保険に入ることができません。

弁護士法人の法律事務所の場合

弁護士法人の場合は、全ての社会保険に強制加入となります。

医療保険に関しては、「協会けんぽ(全国健康保険協会)」に強制加入となり、年金保険に関しては厚生年金に切り替わります。

全額を個人負担する国民健康保険・国民年金とは異なり、医療保険料・年金保険料の半額を事務所が負担して納める必要があります。

後述するお得な医療保険「弁護士国保」に個人加入していた場合でも強制的に協会けんぽに切り替わってしまうので、転職時には注意が必要です。

協会けんぽと厚生年金に関しては、事業主であるボス弁も加入することができます。

インハウスロイヤーの場合

インハウスロイヤーの場合は、弁護士法人と同じく全ての社会保険に強制加入となります。

弁護士ではなく社員として雇用されるため、法律事務所のように業務委託契約を結ぶことはほとんどありません。

企業の一員となるため、企業の社会保険に強制加入することになります。

厚生年金・雇用保険・労災保険に関しては弁護士法人と同じ加入条件ですが、医療保険に関しては協会けんぽではなく、それぞれの企業が加入する独自の医療保険である可能性があります。

条件次第で保険料を安くできる弁護士国保

「弁護士国保(東京都弁護士国民健康保険組合)」とは、特定の条件を満たした弁護士が個人で加入できる医療保険の一種です。

国民健康保険は所得額によって保険料が増額されますが、弁護士国保の場合は定額制を採用しており、毎月の支払額が常に一定となります。

弁護士は年間所得が高額になりやすいため、多くのケースで弁護士国保に加入した方が保険料を安く抑えられます。

詳しい計算式は割愛しますが、年収が440万円を超える場合は弁護士国保の方が安くなります。

加入条件は、東京三会の所属する弁護士および、関東近郊を中心とした指定地域で活動する弁護士が対象となります。

東京ディズニーリゾートの入園券割引や保養施設の割引利用といった福利厚生も充実しているので、条件を満たしている方は加入することを推奨します。

社会保険の変更手続きを行うケース

弁護士が退職・転職・独立開業を行う場合は、社会保険の変更手続きを行う必要があります。

別の法律事務所に転職する場合

別の法律事務所に転職する場合は、移籍元・移籍先それぞれの労働形態によって社会保険の処理方法が変わります。

労働形態が業務委託契約から雇用契約に変わる場合は、所属先が加入する社会保険に強制加入することになります。加えて弁護士法人だった場合は、協会けんぽ・厚生年金に自動で切り替わります。

雇用契約から業務委託契約に変わる場合は、移籍元で加入していた社会保険からは外れ、自身で医療保険・年金保険に再加入する必要があります。

退職時の手続きで自動的に切り替わる社会保険(国民健康保険など)もありますが、個人加入の医療保険や共済年金などは、自身で変更手続きを行わなければならないケースがあります。

社会保険の変更手続きは煩雑かつ面倒な項目が多いため、現在の契約が業務委託契約であれば転職先でも同じ契約内容が良いという弁護士が多くを占めています。

独立開業する場合

法律事務所から独立開業する場合は、事業規模によって社会保険手続きの方法が変わります。

独立後に従業員を雇用せず一人で業務を遂行する場合は、個人事業主と同じ扱いになります。

前職で加入していた社会保険からは外れ、自身で医療保険・年金保険に再加入することになります。前職が業務委託契約だった場合は、個人事業主になっても変更される項目はありません。

一人以上の従業員を雇用する場合は、雇用保険・労災保険に強制加入となり、常時5人以上の従業員を雇用する場合は、加えて医療保険・年金保険にも強制加入となります。

個人事務所を弁護士法人化する場合は、協会けんぽ・厚生年金への加入義務が新たに加わります。

協会けんぽの保険料・厚生年金保険料・介護保険料の3つは、法人が半額を負担する義務があるため、事務所を運営するための固定費が高くなります。法人化のタイミングについては、雇用状況・利益・経費のバランスを考慮して慎重に行う必要があります。

法人を設立する前に弁護士国保に加入していた場合は、法人設立後14日以内に「組合員法律事務所変更届(弁護士法人用)兼健康保険適用除外承認申請書発行依頼書」を提出することで、引き続き弁護士国保に加入し続けることができます。

まとめ

今回は、弁護士が加入するべき社会保険の種類や条件について解説しました。

社会保険の加入条件は、契約の種類(雇用契約・業務委託契約)と、法律事務所の事業形態(個人事務所・弁護士法人)によって異なります。

転職を検討している方は、自身がどのケースに該当するのかを把握し、転職先を選ぶ際の判断基準として活用してみてください。

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