法律事務所とIT技術の関係性|働き方の変化で進む弁護士業務のIT化について紹介
IT技術の発達によって、様々な業界でIT技術を活用した業務の効率化が進んでいます。業務効率化は法曹界でも着実に進んでおり、弁護士業務においても様々なITサービスを導入する必要がでてきました。この記事では、法律事務所のIT化についての現状と、業務体制をIT化する手順や実例について紹介します。
法律事務所のIT化が進む背景
弁護士業務のIT化が求められる理由は、時代の変化によって起こった働き方などに影響する変化に原因があります。特に大きな理由として挙げられる3つの背景について解説します。
IT技術の発達で書面からデータ環境に移行
業務の効率化を大きく推し進めたのが、情報管理の効率化・スピード化です。
書面主体からデジタルデータを活用した業務が普及したことで、大量のデータを即座に整理整頓し、瞬時に共有できるようになりました。
近年ではデータの取り扱いやスケジュール共有をさらに便利にするツール・アプリの数が増えており、導入することで大幅な時間短縮を実現できるものがあります。
多忙な弁護士にとってはITツールを活用した業務改善が必須になりつつあります。
裁判・行政手続きの電子化
2020年の2月から東京地裁をはじめとする裁判所で、一部の裁判フェーズをオンラインによって実施する試みが進んでいます。
現段階では試験的な導入であるものの、今後運用フェーズを重ねていくことにより、裁判のIT化や関連法の改正はさらに進んでいくことが予想されます。
また、弁護士業務と密接に関係する行政手続きについても、2020年から認印の全廃に向けた取り組みが始まり、各種登記の手順もオンラインで行えるようになっています。
IT技術・ツールを駆使した手続き簡略化の取り組みは、今後も継続的に行われることが予想されるので、弁護士側も即座に対応できるように準備を進める必要があります。
コロナ禍におけるテレワークの推奨
業務のIT化に拍車をかけているのが、2019年12月頃に初めて患者が確認され、いまも世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルスです。
ウイルスの特徴により、多人数の密集・対面コミュニケーション・広域の移動などが制限される中で、業態によっては可能な限りテレワークを推奨するようになってきました。
弁護士はその特性上、テレワークに移行しにくい業務(書類提出・被疑者面会・法定弁論など)があるものの、自身と顧客の安全を確保するため、一部の業務にテレワークを導入する流れがあります。
法律事務所で進む業務IT化の実例
弁護士業務のIT化に伴い、法律事務所のワークスタイルにも変化の動きが見られています。
この章では、現行の法律事務所でも導入しやすい業務IT化の実例について紹介します。
オンラインの相談・打ち合わせ
ビデオ通話による相談・打ち合わせは、効率化の観点からいち早く導入を進めたい項目です。
「Zoom」や「Google Meet」といったビデオ通話サービスの中から、高いセキュリティを備え、事務所内や顧客と活用しやすいものを選んで運用しましょう。
一部のビデオ通話サービスはセキュリティの脆弱性が指摘されていましたが、度重なるアップデートによって改善された部分もあるので、最新の性能を比較する必要があります。
顧客の個人・企業がビデオ通話による法律相談を望んでいる場合は、対応するツールの導入およびアカウント開設を進める必要も出てきます。
資料・書類のデータ化
紙情報をデジタルデータに移行するのも有効な業務IT化です。
デジタルデータ化することで大量の情報に一瞬でアクセスできるようになり、所内の情報伝達がよりスムーズになります。
新規の案件については、資料をデジタルデータで保存するようにするのが1つの方法です。所内で保存している資料・書類に関しては、専用スキャナーや保存用アプリなどを使ってデータ化するとよいでしょう。
データの一元管理と共有
デジタルデータは、インターネット環境があれば、どこでもアクセスできるクラウドデータ保存サービスを活用するのが有効です。
複数人で同時にデータにアクセスでき、保存・編集・共有をスムーズに行えるようになります。
フォルダ・ファイル毎に閲覧を制限をすることが可能なので、運用ルールを徹底すればセキュリティリスクも低く抑えられます。
パソコン・スマートフォンとデバイス毎に共有設定を作ることで、事務所・自宅・外出先とどこでも作業が可能になるため、後述するテレワークの導入にも大きなメリットがあります。
スケジュールの共有と可視化
スケジュール共有ツールに関しては、豊富な機能を備えたツールが多数存在するので、事務所の規模に応じて導入を進めるのが良いでしょう。
スケジュール共有ツールを導入すれば、瞬時に、どこからでも同僚・スタッフのカレンダーを確認でき、業務の割り振りや予定組みをスムーズに進められるようになります。
会議室の予約や会社所有機器の貸し出しなど、社内リソースの予約管理も一括で行えます。
顧客にもスケジュールを共有しておけば、緊急連絡・相談対応の入れ違いを避けることができます。
AIを活用したリーガルチェック
AI(人工知能)を活用した分野では、契約書のレビューツールがあります。
間違いを自動で見つけるアラート機能や、修正箇所の指摘、抜け漏れ対応、条文検索機能など、契約書チェックの工数を削減できる数多くの機能が搭載されています。
現状はサービス発達の最中であり、目視チェックに劣る部分もあるものの、大量の契約書を瞬時にチェックできる処理能力を備えています。
人間の目では拾いきれないミスを指摘してくれる側面もあり、業務の規模によっては部分的に活用してダブルチェックをすることで、よりレビューの質を向上させることも可能です。
テレワークを試験的に導入
弁護士のテレワーク勤務を試験的に導入するのも有効な施策です。
裁判所や顧客先への移動が日常的に発生する弁護士業務においては、法律事務所への出勤を減らすテレワーク制度を導入することで、より効率的な動きができる可能性があります。
法律事務所でテレワーク制度を成立させるためには、弁護士のうち最低一人以上は事務所に出勤し、電話・メール・ファックス・郵便物・来客対応を行う「事務所当番制」を導入の必要が考えられます。
しかしこのような働き方はは、複数事務所の運営を禁止する「弁護士法20条3項」に違反しているといった議論もあるため、部分的に導入しつつ業務を遂行するのが良いでしょう。
弁護士業務のIT化に伴う今後の課題
弁護士業務のIT化によって効率化される部分がある反面、弊害も起きています。
この章では、業務のIT化によって発生しやすい問題の種類について解説します。
セキュリティーリスクの問題
弁護士業務をIT化したときに最も注意しなければならないのが、セキュリティの問題です。
デジタルデータはその特性上、一度外部に漏れると瞬く間に広がってしまいますし、すべてを回収するのは難しいです。
弁護士は多くの顧客情報・機密事項を取り扱うため、データの扱いに関しては細心の注意が必要です。
セキュリティ強化の一例
- セキュリティソフトの導入
- 会社貸与デバイスの持ち出しルールを厳格化
- 機密情報を含むデータの持ち出しを原則禁止
- 情報共有ツールの運用ルールを設定
- ID・パスワードを予測されにくい文字列に変更
- 遠隔操作が可能なツールには二段階認証を導入
また、意外に多い事例が、誤操作によるデータ流出・削除などの人的ミスを原因とした事例です。
システムの不具合や脆弱性だけではなく、思わぬミスによって重要なデータが流出してしまうリスク
があることも覚えておきましょう。
コミュニケーション・意思疎通の低下
オンライン上の連絡が増えることで、対面コミュニケーションの機会は確実に減ります。
直接顔を合わせることがない状態での意思疎通や連携にストレスを感じる方も多く、法律事務所に所属する弁護士同士の連携が乱れたり、関係性が希薄になってしまうリスクがあります。
また、ビデオ通話などのオンライン相談では、表情・声色・感情などの細かいニュアンスを拾いきれないケースがあり、深刻な悩みを抱えている顧客への対応方法としては適さない場合もあると考えられます。
「毎週固定で顔を合わせる日を作る」「やむを得ない場合のみビデオ通話を利用する」など、コミュニケーションの質の低下を防ぐ対策と合わせて導入するのがよいでしょう。
管理ツールの増加と煩雑化
IT化を推し進める上で多くのツール・サービスを導入する必要があるので、むやみに導入してしまうとかえって管理が煩雑になってしまうリスクがあります。
管理ツールを導入するたびに、使用方法の学習・運用ルールの設定・マニュアル作成など、仕組み化すべきポイントも増えるので、課題解決に向けでどのツールが適しているか、本当に必要なツールなのかを見極めるスキルが重要になります。
ツールは無料で使えるものも多いですが、データの取り扱いなど利用規約と、弁護士法の規定が相いれず運用できない可能性もあるので、正式導入する場合は有料版の購入するのが一般的です。
ツールの数によって月の固定費が増えるので、事務所の規模・人数・業務状況などを把握し、優先順位を付けて導入していくのが良いでしょう。
まとめ
技術進歩に伴う法律事務所の業務IT化について解説しました。
ITサービスの発達や裁判のIT化によって、弁護士業務は今後も進化を遂げることが予想されます。
革新的な技術導入によって仕事の効率に大きく差が出ることもあるので、時代の流れに取り残されないように、常に最新のIT情報をキャッチアップしていくとよいでしょう。
この記事では様々な業務IT化の実例を紹介しましたが、全てのITサービスを導入する必要はありません。
現状のワークスタイルを整理して、業務改善に効果がありそうなポイントから少しずつ導入を進めてみてください。
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